民主主義については教科書で学んだものの、やや記憶がおぼろげ……。そんな人も多いかもしれない。大人になって、民主主義にまつわる知識をアップデートする機会はそう多くはないだろう。現在、世界中で民主主義にまつわる書籍が多数刊行されており、改めて注目が集まっている。そんな中で、今回は「え? そうなの」と意外性あふれる民主主義の知識をお届けしたい。『世界でいちばん短くてわかりやすい 民主主義全史』の翻訳者・岩本正明さんに話を聞いた。(取材・構成/佐藤智)

民主主義トリビア

「民主主義=選挙」ではない

――『世界でいちばん短くてわかりやすい 民主主義全史』では民主主義に関して、私たちの常識を覆すような話が続々と出てきますね。

岩本正明(以下、岩本) 私は本書の翻訳を担当したのですが、その過程は驚きの連続でした。いかに自分が民主主義について無知であったのかを痛感したんです。私はアメリカのビジネスメディアであるブルームバーグで記者をしていました。その中で、政治についても人並み以上に勉強していたはずなのです。でも、知らないことがたくさんありました。

世界でいちばん短くてわかりやすい民主主義全史岩本正明(いわもと・まさあき)
1979年生まれ。大阪大学経済学部卒業後、時事通信社に入社。経済部を経て、ニューヨーク州立大学大学院で経済学修士号を取得。通信社ブルームバーグに転じた後、独立。訳書に『FIRE 最強の早期リタイア術』(ダイヤモンド社)などがある。

――おそらく多くの社会人も、民主主義について十分な知識を持ち合わせていないと思います。

岩本 高校の公民科の授業で基本的なことを習うだけで、それ以降は大学で専攻しない限り、民主主義について深く学ぶ機会はありません。現在は18歳で投票できますから、気がつけば選挙権が与えられて、選挙で投票しているような状態かもしれませんね。

 さらにいうと、「民主主義=選挙」という、型にはまった考え方の人も多いでしょう。本書では、必ずしも「民主主義=選挙」ではないということを取り上げています。もちろん選挙や法の統治は民主主義において欠かせない要素ですが、そうしたステレオタイプにはまる社会制度ではないということを本書では気付けるはずです。民主主義に対する理解や関心を深める機会として本書を開いてほしいです。