年初以降、韓国SKハイニックスとサムスン電子の株価下落が鮮明化している。7月には韓国の半導体出荷が急減し、8月の半導体生産は前年同月比1.7%減となった。在庫も急速に積み上がっている。ただ、すべての半導体の需給が崩れ始めたわけではない。車載用の半導体は依然として不足し、経済安全保障の観点から米国やわが国で生産能力を強化する半導体メーカーも増えている。より高性能な演算能力を持つチップ開発競争も激化している。混とんとする世界の半導体市況を解説する。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
米アップルがiPhone増産計画を撤回
最近、世界の半導体市況がまだら模様になっている。一部の半導体に関しては需給が緩み始めている。8月、韓国の半導体生産は前年同月の実績を下回った。前年割れは2018年1月以来だ。
米アップルがiPhone増産計画を撤回したように、スマホの需要が飽和した影響は大きい。3~5年周期で世界の半導体産業が好況と不況を繰り返す「シリコンサイクル」が、谷に向かっているとの見方も出ている。一部の半導体企業の業績悪化懸念が、追加的に高まるだろう。
ただ、すべての半導体の需給が崩れ始めたわけではない。繰り返すが、強弱混合のまだら模様なのだ。車載用の半導体は依然として不足していて、経済安全保障の観点から米国やわが国で生産能力を強化する半導体メーカーも増えている。より高性能な演算能力を持つチップ開発競争も激化している。
当面、世界の景気後退懸念が高まり、メモリーを中心に半導体需要は一段と減少するだろう。そうした状況にあっても、半導体関連企業は最先端チップの設計・開発・製造に必要な技術の確立を急がなければならない。中長期的に考えると、それが各社の成長と、各国経済の実力に大きな影響を与えるだろう。