2021年10~12月期のGDPギャップ(潜在的な需要と供給の差)はマイナス3.1%、金額にして年換算で17兆円の需要が不足している。人々が欲しいと思うモノやサービスが見当たらず、新しい需要を生み出すための構造改革が足りないからだ。需要の旺盛さをはじめ「経済の実力の差」が、米国やユーロ圏とわが国の金融政策の方向性の違いに明確に表れている。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
金融緩和と外需依存のわが国は
かなり厳しい経済環境を迎える
米国およびユーロ圏とわが国の金融政策の違いが鮮明である。4月中旬以降の米国では、「より大きな幅で追加利上げが実施される」と予想する投資家が急増した。想定を上回るペースで物価が上昇しているため、連邦準備制度理事会(FRB)が追加利上げやバランスシート縮小を急ぐとの警戒感は高まるだろう。
ユーロ圏でも物価は高騰している。早ければ7月に欧州中央銀行(ECB)が利上げに踏み切る可能性がある。その一方で、わが国の需給ギャップはマイナスだ。日本銀行は物価の上昇を定着させるべく、緩和的な金融政策を続けるだろう。
金融政策の方向性の違いは、実体経済と株価や為替レートなどの金融市場に顕著な影響を与える。今後、米国の追加利上げなどによって世界経済の減速は鮮明化する可能性が高い。金融市場では、世界的に株価やジャンク級社債の価格が下落するだろう。米金利上昇が新興国からの資金流出圧力を高め、中国などの債務問題が深刻化する展開も排除できない。
そうした展開が想定される状況下、金融政策の正常化が遅れる国では、中央銀行が後々の金融緩和の余地を確保することが、これまで以上に難しくなるだろう。金融緩和と外需依存で景気の持ち直しを実現してきたわが国は、かなり厳しい経済環境を迎える恐れが高まっている。