五輪汚職の裏にある日本スポーツ界の脆弱性
8月17日、東京2020組織委員会(以下、組織委)の高橋治之元理事が逮捕されるというニュースが舞い込んできた。選手の努力と感謝によって取り戻せたと思っていたオリンピックに対する正のイメージが、再び崩れていく音が聞こえた。東京2020で唯一のレガシーであるべき「人」が立件されたのである。
この騒動に、世論は「オリンピックの商業主義化」にその原因を求めており、汚れた東京五輪のレッテルを貼る報道は、高橋氏を「スポーツ界を牛耳るフィクサー」「スポーツビジネスを変えた男」などとして、スポーツ界の大物として描く。
しかし、かつて日本オリンピック委員会(JOC)職員として電通とオリンピックビジネスで渡り合った経験がある私には、別の風景が見える。
今回の汚職は、高橋治之という特殊な個性が起こした特殊な事件であり、その根本的な原因は日本スポーツ界の「自律」の脆弱性にあると映るのだ。