高性能画像生成AIが無料配布され、ネット上で「革命」といわれ話題沸騰となっている。一方、2021年に老舗オークションでNFTアート作品が売り上げ100万ドル(1億4000万円超)を突破するなど、今、デジタルアートが熱い。海外では資産として注目度が高いが、日本ではどうなのだろう?相続税対策としてもNFTアートは有効なのだろうか。(税理士、岡野相続税理士法人 代表社員 岡野雄志)
なぜ、今、「NFTアート」が話題になっているのか?
NFTアートが注目されるきっかけとなった最高額作品といえば、アメリカのデジタルアーティスト・Beeple(ビープル/本名マイク・ウィンケルマン)の『Everydays - the First 5000 Days』だろう。2021年3月、イギリスの老舗オークションハウス・クリスティーズがわずか100ドルで入札開始したこの作品は、1時間足らずで100万ドルに跳ね上がり、日本円にして約75億円で落札されたそうだ。
また先頃、MoMA(The Museum of Modern Art/ニューヨーク近代美術館)が所有するコレクションのうち29点を、現在も事業継続中の国際競売会社で世界最古のサザビーズに出品予定と注目された。ピカソ、ルソー、ルノワール、ベーコンの名作も含まれる。目的はNFTの購入資金調達とのことだ。
世界は、なぜ、こんなにもNFTアートに沸き立っているのだろう?
そもそも、海外富裕層には「現金」「株」「土地(不動産)」に加え「アート」という、分散投資によるリスク回避「資産4分法」の不文律がある。また、資産価値のある人気アートは、投資家のネームバリューや保有する資産家の文化的ステータスをも高めるという、副次効果のおまけも付いてくる。
美術史上で重要な役割を果たしてきた「パトロン」は上流階級が多く、一流意識も満たされるのかもしれない。代表的パトロンといえば、ルネサンス時代のイタリア名門貴族・メディチ家。日本でも、『源氏物語絵巻』などの大和絵、狩野派などを生み育てたのは、平安時代に栄華を極めた藤原家だ。
しかし、上記の特徴は、伝統的リアルアートや従来のコンテンポラリーアートにもいえたことだ。NFTアートの最大の利点は、何といっても「贋作やコピーではないという証明が可能」になったことだろう。保証書や鑑定書が添えられていなくても、作品自体が自らの価値を証明できるのだ。