ビジネスの世界で注目を集める「心理的安全性」という言葉。その重要性は分かっているけれど、具体的にどのようなコミュニケーションで心理的安全性の高い環境を整えればいいのか分からないリーダーも多いのではないでしょうか。そんな問題を解決する教科書が『心理的安全性を高めるリーダーの声かけベスト100』です。本書では実際のオフィスで使われた声かけ1000万件超のうち、特に効果の高かった100件を紹介。NG表現とOK表現の言い換え例を見せながら、心理的安全性を高める声かけを理解していきます。本連載では、『心理的安全性を高めるリーダーの声かけベスト100』で掲載した声かけをピックアップして掲載。まずは具体的な事例紹介に入る前に、「そもそも心理的安全性とは何か」について解説した文章を、『心理的安全性を高めるリーダーの声かけベスト100』から抜粋して紹介します。
新入社員が仕事になじんで業務が軌道に乗っている姿を見るのは、リーダーや先輩にとってうれしいものです。そんな新入社員に対して、「その調子で、早く一人前になってね」と声をかけたくなります。
応援しているつもりでつい出てしまうフレーズですが、心理的安全性という観点から言えば、さらに良い声かけがあります。それが「1年目とは思えない仕事ぶりだよ」です。
Beforeのフレーズだって悪くないのでは、と思う人も多いでしょう。私自身、かつてはそう言っていました。しかしあるとき、この言葉には暗に「あなた(新入社員)はまだ半人前」という意味を含んでいるということに気がついたのです。
実際に、こう言われた新入社員のうちの少なからぬメンバーが、リーダーに「半人前」「未熟者」と思われるリスクを恐れ、「一人前になるまでは意見を述べたり、提案をしたりするのは控えよう」と感じたそうです。これが、心理的安全性が低いということです。
対人リスクの不安と心理的安全性はシーソーの関係となります。
確かに仕事という面では、新入社員は半人前かもしれません。1年目の社員と3年目の社員の仕事ぶりを比べたら、1年目の方が未熟なのは間違いありません。しかし、ここで大事なのは、相手が半人前だからといって、「あなたは半人前ですよ」「発言は一人前になってからですよ」というシグナルを、わざわざ伝える必要はないということです。
こう伝えることで組織にとって得るものがあるのか、問い直してみましょう。得られるものは「メンバーにマウントを取った」「上下関係がハッキリした」くらいのものです。
ここで、興味深い調査結果を紹介します。新入社員が考える「理想の上司・先輩像」に関する意識調査(日本能率協会)です。