衝撃の事実!日本企業がダメになった原因は「心理的安全性」の欠如にあった
なぜ職場に「心理的安全性」が必要なのか?#02
ビジネスの世界で注目を集める「心理的安全性」という言葉。その重要性は分かっているけれど、具体的にどのようなコミュニケーションで心理的安全性の高い環境を整えればいいのか分からないリーダーも多いのではないでしょうか。そんな問題を解決する教科書が『心理的安全性を高めるリーダーの声かけベスト100』です。本書では実際のオフィスで使われた声かけ1000万件超のうち、特に効果の高かった100件を紹介。NG表現とOK表現の言い換え例を見せながら、心理的安全性を高める声かけを理解していきます。本連載では、『心理的安全性を高めるリーダーの声かけベスト100』で掲載した声かけをピックアップして掲載。まずは具体的な事例紹介に入る前に、「そもそも心理的安全性とは何か」について解説した文章を、『心理的安全性を高めるリーダーの声かけベスト100』から抜粋して紹介します。
心理的安全性がないから、日本企業は衰退した
心理的安全性とは何か。その内容については1つ前の連載記事「実は相当厳しい「心理的安全性」。多くの人がその意味を勘違いしている!」で紹介しています。
こうして言葉を尽くしても、読者の中には心理的安全性について、「メンバーを甘やかすだけではないか」と懸念している人もいるかもしれません。ですが、心理的安全性は今後の企業経営には必須の要素となります。その時代的な背景についても解説しましょう。
みなさんは、日本の「従業員エンゲージメント」(従業員の企業に対する信頼や貢献意欲を示す)が世界最低だというニュースを聞いたことはあるでしょうか。アメリカの調査会社ギャラップが発表した内容で、日本のビジネスパーソンに衝撃を与えました。
この結果が示唆していることを私なりに要約すると、「国際的に見て、日本の従業員は企業を信頼せず、企業に対する貢献意欲も低く、企業側も人材に投資せず、国際的な人材競争力も下がる傾向にある」ということになります。
なぜ、このような状況が生まれてしまったのでしょうか。
もともと日本企業は、高度経済成長期において、すばらしい組織力と現場力による“改善のスピード”で、他国を圧倒してきました。少し乱暴な表現にはなりますが、この組織力と現場力を支えたものが、上意下達的な文化や同質性を求める企業風土でした。
このことを踏まえた上で、経営学者の遠藤功さんは、『「カルチャー」を経営のど真ん中に据える』(東洋経済新報社)の中で、今日の日本の凋落が生じた要因を「組織風土の劣化」にあると述べています。その原因については「上司の高圧的・威圧的な態度と言動が、すべての起点」になっていると指摘し、心理的安全性が担保されていない会社が増殖したがゆえに、日本企業は衰退したと結論づけています。
心理的安全性とは、「自分の意見を組織のメンバーの誰とでも率直に言い合える状態」です。しかし、多くの企業はこれとは逆の、「目立つ発言をしてはいけない」「発言をしたら恥ずかしい」などの価値観で社員を育ててきたのではないでしょうか。
経営に失敗して痛感した、心理的安全性の重要性
私は17年間、経営の世界で働いてきて、この現実を痛感しています。特にはじめの10年間は、徹夜もいとわないワンマン社長として、体育会系の根性論を振りかざしてメンバーを率いてきました。恥ずかしながら、心理的安全性の低い社長だったのです。
そのため、メンバーの離職が続きました。このダメージはことのほか大きく、「このままではもうやっていけない」と極限まで追い詰められ、ようやく自分のマネジメントスタイルを変えることを決意しました。
そこで着目したのが、「心理的安全性」です。『心理的安全性を高めるリーダーの声かけベスト100』には、過去の私の失敗談や、そこから得た学びについても盛りこんでいます。
現在、私たちの会社は「Unipos」というサービスを通じ、心理的安全性を高めることで、組織風土の改革のお手伝いをしています。
一朝一夕でできることではありませんが、それが実現したときの「会社の風土が変わって本当に良かった」「うちの会社も捨てたものではないな」「社員の目の色が変わったよ」といったお客さまの言葉を聞くたびに、「心理的安全性の高い組織になれば、会社は良い方向に変わる」ことを確信してきました。
『心理的安全性を高めるリーダーの声かけベスト100』には、そんなお客さまの成功事例も、ふんだんに盛り込んでいます。
あなたの会議では、「シーン現象」が起きていませんか?
「では、ほかに意見はあるかな?」
「シーン……」
「ほかに意見もないようなので会議を終わります」
このような会議が日々、多くの会社で行われているのではないでしょうか。あまりに日常的なシーンすぎて、何がおかしいのか分かりにくいかもしれません。
多くのリーダーは、会議に参加するメンバーから多様な意見が出ることを期待しています。それなのに、結局は沈黙が会議を支配し、何も意見が出てこない――。こんな「シーン現象」を無視して、そのまま進んでもいいのでしょうか?
実はこういった会議は、組織の心理的安全性が低い証拠です。
心理的安全性が低いから、メンバーは意見を持っていても言い出せないのです。
それはなぜか?
メンバーが恥ずかしがりなわけでも、企画案に賛成しているわけでもありません。それは、あなたの組織が「沈黙を選んだ方が得」な組織だからです。リーダーであるあなた一人が悪いのではなく、長年の蓄積、組織の風土がそうさせているのです。
心理的安全性とは簡単に言うと「自分の考えや意見などを組織のメンバーの誰とでも言い合える状態」。近年は人的資本経営が重要視されています。これは「資本であるすべての人を活かしきる経営」と表現できます。
「シーン……」となる組織と、活発な発言が展開されて多くの社員が活躍する組織では、今後、競争力が大きく異なってきます。元来、日本企業は組織の力や改善の力が優れていました。すべての人の力を活かすことができていたのです。
誰しも、変わることができます。組織だって変われるのです。その一歩として、何か新しい制度などを次々とつくるのではなく、まずは心理的安全性を高め、人間関係の土台を作りませんか、というのが私の提案です。
本書ではさまざまな悪い声かけと、良い声かけを収録しています。どのページから読み始めても発見があるようにつくりました。ぜひご一読ください。
田中弦(たなか・ゆづる)
Unipos株式会社代表取締役社長
1999年にソフトバンクのインターネット部門採用第1期生としてインターネット産業に関わる。ネットイヤーグループ創業に参画後、2001年に経営コンサルティング会社、コーポレイトディレクション入社。2005年、ネットエイジグループ(現ユナイテッド)執行役員。モバイル広告代理店事業の立ち上げに関わる。2005年Fringe81株式会社を創業、代表取締役に就任。2013年3月マネジメントバイアウトにより独立。2017年8月に東証マザーズへ上場。同年に「発見大賞」という社内人事制度から着想を得たUniposのサービスを開始。2021年10月に社名変更し、Unipos株式会社の代表取締役社長として、感情報酬の社会実装に取り組む。
【本書のポイント】
①心理的安全性の高いチームが作れます
②メンバーにどんな言葉をかければいいのか分かります
③想定外の「ハラスメント」を避けることができます
④チームの結束力が高まり、業績が上がります
⑤読んだその日から、実践できます
【売上高132%増】 【離職率27%減】
【現場力アップ】 【ミス、トラブル激減】
たったひと言葉で、組織が生まれ変わる!
JT、アース製薬、信金中央金庫、メルカリ、Sansan……
345社1000万件超の声かけから導き出した結果を凝縮!
一瞬で生産性が上がり、結束力が高まる魔法の言葉とは?
これからの働く環境には、「心理的安全性が欠かせない」。それは、多くのリーダーが理解しています。
しかし!!! 果たして、どんな言葉をかけると心理的安全性は高まるのでしょうか? 現場で不安を抱えているリーダーも多いはずです。
本書を読めば、その答えが一発で分かります。
本書は、従業員同士で評価し合い、互いに報酬を送る仕組み「Unipos(ユニポス)」というサービス上で、実際に交わされた1000万件以上の声かけの中から、最も効果のあった声かけベスト100を紹介しています。
「若手社員にどんな言葉をかければやる気になるのか?」
「チームの結束力を高めるには何と話しかければいいのか」
もうそんな風に迷うことはありません。現場に立ったリーダーが、読んだその日から実践できる、心理的安全性を高める声かけが本書には盛り込まれています。
■声かけ事例はすべて「言い換え」で紹介しています
×大丈夫 → ○つまずいているのはどのあたり?
×大変そうだね → ○頑張っているね
×お疲れ様 → ○今日はどうでしたか?
■心理的安全性に詳しい9人のプロフェッショナルのコラムを収録
仲山考材株式会社代表取締役、楽天グループ株式会社楽天大学学長の仲山進也さん
株式会社ZENTech取締役の石井遼介さん
株式会社エリクシア代表取締役の上村紀夫さん
株式会社人材研究所代表取締役の曽和利光さん
株式会社チームボックス代表取締役の中竹竜二さん
エール株式会社取締役の篠田真貴子さん
オムロン株式会社インキュベーション推進本部シニアアドバイザーの竹林一さん
早稲田大学商学部准教授の村瀬俊朗さん
Zホールディングス株式会社Zアカデミア学長、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部長の伊藤羊一さん
■目次■
第1章 リーダーとメンバーの信頼関係を築く声かけ
第2章 ミス・トラブルを防ぐ声かけ
第3章 突然の退職を防ぐ声かけ
第4章 会社のカルチャーになじむ声かけ
第5章 メンバーを育てる声かけ
第6章 イノベーションが生まれる声かけ
第7章 部門間の衝突をなくす声かけ
第8章 階層を超えて届ける声かけ