東京・浅草といえば、浅草寺、仲見世、人力車のある風景を思い浮かべる人も多いだろう。しかし、コロナ禍で観光業界は大打撃を受け、人力車業者も窮地に追いやられた。乗せる観光客の姿が消え、辞める車夫たちも相次いだのだ。そんな浅草の街で立ち尽くす車夫たちを救ったのが、これまで人力車に乗ろうとしなかった東京近郊で暮らす人たちと若い女性たち、そしてインターネット通販最大手の米Amazon.comだった。(ダイヤモンド編集部 宝金奏恵)
浅草に戻りつつある活気、人力車が再び走り出した
新型コロナ感染拡大で打撃を受けた東京・浅草の街に、この夏、観光客が戻ってきた。雷門前の広場では、人力車の車夫たちが通りかかる人に声をかけたり、記念撮影を手伝ったりしている。
浅草には人力車で観光案内をする事業者が20社ある。観光客が激減した浅草の街で再び人力車が走るまで、車夫たちは試行錯誤を続けてきた。
「去年、おととしはですね…本当に浅草も大変でした。われわれの業態だけじゃないですけど、いつも人が並んでいた浅草の人気飲食店でも、客が入らない。われわれもコロナ前は人力車を何十台も稼働していたのが、2台だけ稼働させる状況でした。それでも1日営業してお客は1組いるか…という状況でした」
こう語るのは、全国の観光地で200台以上の人力車を所有し観光案内などを行うえびす屋浅草の梶原浩介所長(40)。今年は浅草にも人出が徐々に戻り、8月中旬の36度を超える真夏日でも、車夫一人につき一日5~10組ほどの客を乗せて走った。
新型コロナウイルスが感染拡大するまではえびす屋浅草に130人ほどの車夫が所属していたが、緊急事態宣言が発令されて一時期、約30人に減ったという。
「飲食店や宿泊施設などと違って、うちは季節やイベントごとに従業員の数も変わるんですが、大体従業員のうち3割ほどは、学生アルバイトでした。アルバイトが大学を卒業すると同時に、毎年入れ替えが起こるんですね。それが、コロナ禍でアルバイトは出ていく一方になりました」
辞める車夫たちが相次ぎ、観光客が来ない浅草の街で立ち尽くす車夫たちを救ったのが、インターネット通販最大手の米Amazon.comと、東京近郊で暮らす人たちだった。