最新のがん統計(国立がん研究センター)によると、III期の結腸がんの10年生存率は男女とも6割ほどだ。
1990年代に術後の抗がん剤治療が始まってから、結腸がんの生存率はぐっと改善された。手術がぎりぎり可能なIII期でも初回治療から再発までの無病生存期間(DFS)は25%延びている。
ただ、最近は頭打ち傾向にあり、次の一手が模索されてきた。
米ペニントン生物医学研究センターのグループは、結腸がんIII期と診断後、手術と術後抗がん剤治療を受けたサバイバー(がん経験者)1696人を対象に、身体活動がDFSにどう影響するかを調べた(登録期間は2011年6月~15年11月)。
登録サバイバーは、オンラインで過去2カ月間の身体活動量と時間を申告し、術後抗がん剤治療中(手術4カ月後)と、抗がん剤治療が終わった手術14カ月後に身体活動量を報告した。また、全てのサバイバーが、術後3年間は半年ごとに、その後は1年に1回の定期検査を受けている。
およそ6年間の追跡期間中に457人が再発、または死亡。3年DFSは83.9%だった。
この間の身体活動量──具体的には軽度~中程度の運動、高強度の運動、早歩き、筋力トレーニング(筋トレ)とDFSとの関係を調べた結果、運動強度が高く、しっかり時間をとって身体を動かしているほどDFSは良好だった。
具体的には18メッツ(安静時を1とする運動強度単位)/週以上の高強度運動を続けたサバイバーは、3メッツ/週未満と比較し、3年DFSが10.6%(87.1%vs76.5%)改善した。また、1.5時間/週以上の軽強度~中強度の運動を続けたサバイバーは、0時間と比較し、3年DFSが21.4%(87.1%vs65.7%)改善したのである。
この数年、がん治療~療養中は身体を動かした方が生存率が改善するという報告が増えている。今回の研究でも、運動が結腸がんの再発予防に働く可能性が示された。
研究者は「サバイバーの皆さんは、楽しく続けられる運動を見つけてください」と呼びかけている。
(取材・構成/医学ライター 井手ゆきえ)