「私はなぜこんなに生きづらいんだろう」「なぜあの人はあんなことを言うのだろう」。自分と他人の心について知りたいと思うことはないだろうか。そんな人におすすめなのが、2022年8月3日発売の『こころの葛藤はすべて私の味方だ。』だ。著者の精神科医のチョン・ドオン氏は精神科、神経科、睡眠医学の専門医として各種メディアで韓国の名医に選ばれている。本書は「心の勉強をしたい人が最初に読むべき本」「カウンセリングや癒しの効果がある」「ネガティブな自分まで受け入れられるようになる」などの感想が多数寄せられている。本書の原著である『フロイトの椅子』は韓国の人気女性アイドルグループ・少女時代のソヒョン氏も愛読しているベストセラー。ソヒョン氏は「難しすぎないので、いつもそばに置いて読みながら心をコントロールしています」と推薦の言葉を寄せている。あたかも実際に精神分析を受けているかのように、自分の本心を探り、心の傷を癒すヒントをくれる1冊。今回は日本版の刊行を記念して、本書から特別に一部抜粋・再構成して紹介する。
受け入れがたい思考を無意識の世界に埋める
あんなに長い時間を一緒に過ごしたのに、自分を捨てて去っていった昔の恋人の名前をなかなか思い出せない、ということがあります。
覚えているのがつらすぎて、その名前を意識から消してしまったのです。
机の上の写真が目に入らないように引き出しの奥深くにしまい込んだあと、そのうちどこに入れたのかも忘れてしまった状態と同じです。
これが「抑圧」です。
受け入れがたい不都合な欲望や衝動、思考を無意識の世界に埋めてしまうのです。
一種の生き埋めですね。
抑圧されたものは完全に消えるわけではありません。無意識の世界で生きています。
本来の姿のままで登場することはできませんが、象徴的な姿に変装して、しきりに顔を見せようとします。
夢に出てきたり、身体的な症状となってあらわれます。
腹を立てて携帯の電話を切るのは「抑制」
一方、「抑制」は、抑圧とはちがって意識的に行われる防衛機制です。
衝動を意識的に先延ばしにしたり、回避したりすることです。
恋人とケンカをして、腹立ちまぎれに携帯の電源を切るといった行動をいいます。
しばらく彼の存在を心から消そうとしますが、完全に忘れることはありません。
抑制は「耳を掩いて鐘を盗む」ようなものです。
(本稿は、チョン・ドオン著 藤田麗子訳『こころの葛藤はすべて自分の味方だ。 「本当の自分」を見つけて癒すフロイトの教え』から一部抜粋・再構成したものです)