多くのビジネスパーソンから、「会議がうまく仕切れない」「無駄な会議だと言われる」「何度も似たような会議を繰り返してしまう」「結論が出ない」といった悩みを耳にする。しかし、「1ページ」のメモを事前に作り、その場で配布してうまく活用すれば、会議の進行は大きく変わる。何より、「1ページ」の力は、ミーティングをうまく仕切れなかった著者自身が、P&G、楽天、フェイスブック、MOON-Xと業界も会社も、自分の役割さえも変わっても、一貫して変わらず、実感し続けている。当連載では、『今すぐ結果が出る 1ページ思考』(長谷川晋)にまとめられている「1ページ」を活用した会議の進め方などを解説していきたい。

あらゆるビジネスシーンで使える「1ページ思考」Photo: Adobe Stock

会議、打ち合わせ、商談、1on1ミーティング…。「1ページ」の舞台は無限大

 プロジェクトのリーダーとして、ミーティングで「1ページ」を使うようになり、私は徐々に考え抜いて肚を決め、うまく人を巻き込んで動かせるようになっていきました。

 以来、プロジェクトを動かすためのミーティングだけではなく、いろいろな場面でこれが使えるのではないか、と考えるようになりました。

 実際、後にブランドマネージャーになってからも、あらゆるものに「1ページ」を使いました。

 例えば、「チームミーティング」と呼ばれていた、自分の部下と行っていた毎週のミーティング。ここでも、その日、話さなければいけないアジェンダから、次にやらないといけないことまで、ビジネス周り、組織周りのことを漏れなく伝えることができるようになりました。

 担当ブランドの年間プランや予算を提案し決定するような、年に1回の重要な会議でも「1ページ」を作成し、ファイナンスチームや経営陣とディスカッションを行いました。

 今日、何を話したいか、背景として知っておいてほしいこと、提案してディスカッションしたいこと、どういう段取りで最終形まで持っていきたいか。この「1ページ」があることで、幅広くフワッとしがちな戦略的な大きなテーマや、普通にやるとあまり踏み込んで討議ができない年間予算の考え方を含めて、必要な情報を過不足なく伝え、自分自身の考えをぶつけた上で、合意形成をすることができました。

 広告代理店にテレビCMやパッケージのデザインなどのクリエイティブな制作物を作ってもらうときも、口頭で伝えたいことをしゃべるのではなく、「1ページ」を使ってコミュニケーションしました。依頼する上での明確な要件定義を言語化でき、大いに役立ちました。通常、この「1ページ」は「クリエイティブブリーフ」と呼ばれており、ブリーフの良し悪しで作っていただける制作物のレベルが決まると言われていた(英語で「What you get is what you deserve」と言います)ので、非常に真剣に準備をしていました。

 他にも、法的な立場からの見解も踏まえた対応が求められるようなシビアなディスカッションにも使いましたし、担当ブランドのシェアをナンバーワンにするためにどんなビジネスプランが必要なのか、という討議にも使いました。

 組織をめぐるディスカッションや1 on 1ミーティング、リーダーとして組織のビジョンや戦略の発信などにも使っていました。

 例えば、チーム全員で参加したワークショップで何を学び、その学びに基づいて具体的に何をいつまでにするべきなのかを「1ページ」にまとめる。あるいは、チームにとって今後どんな研修プログラムが有益なのかを「1ページ」にまとめて、ディスカッションする。このようなチームでの討議にも活用していました。

 組織の構造自体を変えるような大規模なプロジェクトでも、今どんな仕組みでビジネスや新製品のプロセスが回っているのか、重要な情報を整理して、それを踏まえて次のステップをどうするか、という提案も「1ページ」にまとめていました。

 新しいチームメンバーが入ってきたとき、配属されて最初に話さなければいけないことも、「1ページ」を使って整理していました。チームのことや業務内容のこと、これから先の段取りなど、幅広い内容をカバーしつつ1時間ぴったりで終える上で、非常に役に立ちました。