新日本酒紀行「月の輪」月の輪酒造店外観 Photo by Yohko Yamamoto

地の米で醸す酒と米麹のジェラートが愛される老舗蔵

 日本最大の杜氏集団である南部杜氏の発祥地、岩手県紫波町。この地で1886年に創業した月の輪酒造店のモットーは「企業としてではなく家業として」、そして「飲み飽きせぬ酒」だ。初代は隣町の矢巾町で麹屋を営んでいたが、酒を造りたいと一念発起。良い水を求めて紫波町で酒造を始めた。「何もないところから田んぼを借り、情熱だけで酒造りを始めた」と、5代目で杜氏の横沢裕子(ひろこ)さん。2代目は杜氏、3代目は杜氏に酒造指導を行う技師を長く務め、県内の老杜氏から「おじいさんにいろいろ教えてもらったよ」と教わる。裕子さんが醸す酒は、美しさに定評がある。代々受け継がれる技術を磨き上げ、全国新酒鑑評会で金賞を何度も受賞する実力派だ。

 原料米の9割は岩手県産で、紫波町の名産品もち米100%の純米酒も手掛ける。もち米は粘着力が強く麹を造りづらいが挑み続けて完成した。20年以上前に商品化した「無農薬米酒」は自然食志向の4代目、大造さんが考えた。大造さんは米麹のアイスクリームも発案し、裕子さんはそれをベースに町内産のイチゴやブルーベリーなど、季節の素材を組み合わせたジェラートを開発。麹の自然な甘さと季節の味が楽しく、売店の人気商品になり、若い常連客からは「アイス屋なのに何で酒を売ってるの?」と聞かれるほどだ。