従業員数501人以上→101人以上→51人以上
社会保険は段階的に適用拡大されている

 まず、2016年10月の適用拡大では、1週間の労働時間と1カ月の労働日数が正規雇用の人の4分の3以上(週の労働時間が30時間以上)という基準に加えて、従業員数が501人以上の大企業は、次の5つの条件を全て満たした短時間労働者に社会保険を適用することになった。

●2016年10月の適用拡大の内容
(1)週の労働時間が20時間以上
(2)月額賃金8万8000円以上(年収106万円以上)
(3)勤務期間1年以上の見込み
(4)学生ではない
(5)従業員数が501人以上

 その後、2017年4月からは、従業員数500人以下の事業所においても、労使間の合意があれば適用拡大ができるようになった。

 そして、この2022年10月1日からは、(3)と(5)の要件が次のように見直された。

●2022年10月の適用拡大の内容
(1)週の労働時間が20時間以上
(2)月額賃金8万8000円以上(年収106万円以上)
(3)2カ月を超える雇用見込みがある
(4)学生ではない
(5)従業員数が101人以上

 つまり、週の労働時間が20時間以上、年収106万円以上の人は、雇用期間が短くても、勤務先が中小企業でも、社会保険に強制加入しなければいけなくなったのだ(学生を除く)。

 さらに、2024年10月からは、「従業員数51人以上」の企業で働く短時間労働者にも社会保険が適用されることになっている。

 では、実際に負担する健康保険料や受けられる給付には、どのような変化があるのだろうか。

 健康保険料は、それぞれの健保組合によって異なるが、東京都の協会けんぽの保険料率は9.81%(40歳未満の場合)。保険料は労使折半なので、労働者本人が負担するのは、このうちの半分の4.9%だ。パートタイムやアルバイトなどの短時間労働者で、月額賃金8万8000円(年収約106万円)だと、本人の健康保険料は4316.4円。これが給与から天引きされ、事業主負担分と合わせて健康保険に納付される。

 まず、扶養家族として会社員の家族の健康保険に加入していた人は、これまでは保険料の負担なしで健康保険を利用できたが、新たに4500円前後の負担が発生することになる。

 また、これまで国民健康保険に加入していた人も、負担増となりそうだ。国民健康保険料は、都道府県ごとに保険料が異なるが、住民税非課税世帯にはさまざまな減免があり、年収106万円の人の月額保険料は、おおむね2000円~3000円だ(加入する家族の人数などに応じて異なる)。そのため、社会保険の適用を受けることで、健康保険料の部分では1000円~2000円が増えることになる。

 ただし、健康保険料の負担は増えるものの、厚生年金保険も含めると、シングルマザーなどこれまで自分で国民年金保険料を納めていた人は、トータルでの負担は軽くなる。

 国民年金保険料は、月額1万6590円(2022年度)だが、厚生年金に加入すると、本人負担は8052円(月額賃金8万8000円の場合)。健康保険料での負担が増えても、厚生年金保険料の負担が下がるので、トータルでは5000円程度保険料は安くなるのだ。