岩波書店では、すでに2011年11月08日から岩波新書と岩波ジュニア新書の、2012年04月11日から岩波文庫の電子書籍版の配信をはじめています。また、フランス書院では、2012年12月25日現在、同社のホームページで販売している書籍2118作品のうち、すでに1632作品(77.1%)が電子書籍化済です(紀伊國屋BookWebのデータベース上は3595作品存在、同45.4%)。

 この2社は電子書籍化率では先頭を走っている感がありますが、ともに価格設定については強気で、活字本と電子書籍は同一価格が原則です。ただ、面白いことに、岩波書店には、一部、電子書籍のほうが安いものがありますが、フランス書院では逆に、一部、電子書籍のほうが高いものがあります。

 最近筆者が何社かの出版社に電子書籍に対する取り組みに関してヒアリングしたところ、有名どころの出版社の多くから積極的な声が聞かれました。

「ユーザーの選択肢を広げるためにも積極的に取り組んでいきます。新刊は、コミックの一部を除き、全作品電子書籍化する方針ですし、既刊についてもやれるものから順にすべて(*1)対応する予定です」(講談社 デジタルビジネス局 部長 吉村浩氏)

「活字、コミックを中心に、電子書籍ビューワでの可読性・再現性が高いタイプの本は、新刊についても全作品(*2)を電子書籍化する方針です。既刊も原則、同様です」(メディアファクトリー デジタルメディア局 マネージャー 宮木良磨氏)

 なかには、「既刊については、活字本の売れ行きがよかったもの、電子書籍に合う内容のもの、陳腐化していないものなど、個別に判断しています」という出版社もありました。

 総じて、主要な出版社の体制はすでに整っていると言えます。

[ファイナンス]
 出版デジタル機構が2012年4月2日に発足し、粛々と電子書籍化が進められてきましたが、漸く11月16日になって電子書籍の配信がはじまりました。報道によると、最初の配信は、経済産業省「コンテンツ緊急電子化事業(緊デジ)」を活用してのものであり、この事業は「東日本大震災の被災地域の知へのアクセス向上に電子書籍を有効活用する」という目的(大義名分?)で、経済産業省が日本出版インフラセンターに10億円の補助金を交付し、2013年の3月一杯までに6万タイトルの電子書籍化を行うというものです。

 このコンテンツ緊急電子化事業によって、既刊の電子書籍化が大きく前進したことは間違いなく、謂わば「緊デジ」が既刊の電子書籍化をファイナンスしたと捉えることもできます。

*1筆者註 著作権者が故人であるなどの理由で、著作権処理が難しいものを除いてすべて、という意味。

*2筆者註 レイアウトが複雑、判型が特殊などの理由で、デバイスで読めるようにすることが難しい作品を除いてすべて、という意味。(*1についても同様。)