点滴を打つ人物写真はイメージです Photo:PIXTA

「母親の入院費を支払ってください」
連帯保証人の息子を襲う悲劇

 長い人生において多くの人は病と向き合いながら最期を迎える。生涯の医療費(健康保険給付含む)は約2700万円に上り、その約6割は65歳以上の高齢期に使われる。自己負担軽減や家族の生活を考えて各種保険に加入する人は多いが、年金収入に頼る老後の保険料負担は小さいとはいえない。

 70歳を超えると保険加入率は下降し、未加入の親を持つ子が思わぬ高額入院費に悩まされるケースも見られる。いざというときに備える生命保険。あなたの両親は入っていますか?

「一度、これまでの入院費を支払いに来てもらえませんか」。東京都内の動画制作会社に勤務する40代のサラリーマン男性Aさんが、病院から催促の電話を受けたのはセミの鳴き声が響きだした頃だった。

 半年ほど前に医師から「余命3カ月」の宣告を受けた母親は乳がんが進行し、4月に訪れた80歳の誕生日は病室で迎えた。これまでは本人が院内のATMで現金を引き出してきたが、もはやベッドから立ち上がることもできず、自分で出金することができないのだという。

「仕事で忙しいのにすまないねえ」。スマホから聞こえる母親の涙声に、Aさんは財布を手に職場を抜け出した。