写真:武装した自衛隊Photo:PIXTA

今の若者には、就職を含む自分の人生の戦略と選択が「戦争」からどのような影響を受けるかを考えておくことが必要だろう。ウクライナ戦争を見ていてもそれがよく分かる。今の就活生が「自分の将来に戦争は直接関係ない」と考えているとしたら、日本の若者として「鈍い」と言わざるを得ない。「戦争のある時代」に就活生がすべき人生設計について考えてみたい。(経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)

「戦争はあり得ないこと」
とは言えなくなった

 就活生は自分の人生にあって「戦争」についてどう考えるべきかが、本稿のテーマだ。ここで言う戦争は「受験戦争」のような比喩ではなく、現在ウクライナで行われているような本当の戦争のことだ。

 なお、本稿では戦争に対する賛否をあえて論じない。「必要な場合がある」という人にも、「何が何でも反対だ」という人にも不満があるかもしれないが、今回は予想と選択の損得に話を絞る。

 さて、ウクライナにロシアが侵攻して戦闘状態が勃発し、いくつかのことが分かった。

 まず、ウクライナから18~60歳の男性は原則国外に出ることができなくなった。男は国のために戦えということになった。また、最近ロシアでも軍務経験がある予備役の動員が始まって、行きたくないと思いつつ戦地に送られる国民が出てきた。侵攻される側も、する側も、国民が戦闘に巻き込まれることがあるということが可視化された。

 日本は海に囲まれている分、外国から直接の侵攻を受けにくいが、周囲には友好的ではない国がある。また、1世紀もさかのぼらずとも日本自身が他国に侵攻した歴史がある。加えて、軍事を全面的に頼っている同盟国の米国は、過去数十年の歴史を見る限り世界一好戦的な国だ。

 いくつかのきっかけがあれば、日本が戦争の当事国になり、今は就活生の学生諸君が戦闘に巻き込まれることは将来「あり得る事態」だと考えておくべきだろう。ちなみに、「きっかけ」は純粋に確率的な現象ではない。これを意図的につくる人がいることも、米国のイラク戦争や今回のウクライナ戦争を見るとよく分かる。

 自分の将来に戦争は直接関係ないと考えているとしたら、就活生世代の日本の若者として、いくつかの意味で「鈍い」と申し上げておこう。