コロナ禍において、Z世代の消費行動が変わりつつある。キーワードとなるのが、「トキ消費」から「ヒト消費」だ。事情に詳しいニッセイ基礎研究所の廣瀬涼氏に話を聞いた。(清談社 鶉野珠子)
SNSの普及により
変化した消費行動
1960~70年代は、モノの所有に価値を見いだす「モノ消費」が盛んだった。そこから時を経て80~90年代に入ると、モノが持つ記号に価値を見いだす「記号消費」や「ブランド消費」が増えていく。モノ自体ではなく、モノから発される“メッセージ”が価値を持つようになっていったのだ。
さらに90~2010年代には“心の充実”が重視され、モノやサービスを購入したことで得られる体験に価値を見いだす「コト消費」が活発になった。その一例として、旅行、レジャー、グルメなどが挙げられる。
ここまでに紹介してきた消費行動はどれも再現性が高く、誰もが似たような消費を行っていた。だが、SNSの登場により、こうした状況が一変する。
「消費をしていくうえで『この消費の様子をSNSに投稿したとき、反響が得られるか』という点が重視されるようになっていったのです。2016年頃に『インスタ映え』という言葉が誕生し、その後、SNSにおいて動画が主流になる中で、コト消費は落ち着いていきました。というのも、『モノ』や『コト』を消費している様子を撮影してSNSにアップしても同じような写真になってしまいますが、動画は編集の仕方次第で写真よりもオリジナリティーを出せます。人とは違う投稿のほうが反響を得られるため、誰でも同じように消費でき、再現性の高い消費行動は下火になっていったわけです」(廣瀬氏、以下同)
廣瀬氏は「SNSの普及で、自分と同じ趣味を持つ仲間が見つけやすくなったことも、オリジナリティーを発信したいという気持ちの高まりを強めている」と話す。