選考に納得がいかない千葉は「スポーツ仲裁裁判所」に提訴。訴えは退けられたが、選考の明確化を問う議論が起こった。

 これを受けて日水連は選考基準を改定。2001年から国際大会派遣選手を選考会の一発勝負で決めるようになった。

「一発勝負」選考に変えた
アテネ五輪では好成績

 その効果が表れたのが前回のアテネオリンピックだ。選考会で世界ランク8位相当の記録で優勝もしくは2位に入った選手という基準で選考。その結果20人の少数精鋭の代表チームが組まれ、金3、銀1、銅4、計8個のメダルを獲得するという好成績を残した。

 今回は基準をさらに明確化した。派遣標準記録は日水連が独自に決めたもので、S・Ⅰ・Ⅱの3段階がある。Sはオリンピックでメダル圏内、Ⅰは8位(決勝進出)、Ⅱは16位(準決勝進出)相当とし、選考会でⅡを上まわったうえで2位までに入った選手を代表とするとした。

 この一発勝負で涙を飲んだ有力選手も少なくない。そのひとりが山本貴司。山本はこれまで3度オリンピックに出場し、アテネ大会200mバタフライでは銀メダルを獲得した実力者。今回の選考会(200m)では派遣標準Ⅱはクリアしたが、3位に終わり4度目のオリンピック出場の夢は適わなかった。山本の夫人は千葉すず。奇しくも奥さんが獲得した派遣基準の明確化に旦那が敗れたことになる。だが、レース後の山本は「持っている力は出し切りました」と潔く語り引退を表明した。日本競泳陣のリーダーで、多くの選手から慕われる選手らしい態度だった。

 他の選手も一発勝負による選考には納得しているようだ。スポーツは結果がすべて。第一線での戦いを続けてきた彼らは、それを受け入れるメンタリティを持っているのだ。

「一発勝負」選考を
導入できない競技も多い

 こうした一発勝負の緊張感に触れると、他の競技の選考の曖昧さが気になる。最近では柔道がそうだ。4月6日に行われた最終選考会・全日本選抜体重別選手権では最重量級を除く男女6階級ずつ12人の代表が決まった。男子は6人ともこの大会の優勝者が代表になったが、女子で優勝して代表になったのは52キロ級の中村美里だけ。48キロ級の谷亮子を含む他の5人はいずれも選考会で敗れたのに代表になった。これは複数の大会の成績を総合的に判断して選考するという独自の基準が全日本柔道連盟にあるからだ。