我が国では、FeliCaチップを搭載した「おサイフケータイ」の登場以来、携帯電話による決済は馴染みの深いものとなっている。また近年では、国際標準規格であり、FeliCaと上位互換性を持つ「近距離無線通信(NFC)」も世界的に注目されている。「iPhoneにNFCは搭載されるのか?」というトピックは、新型のリリースが近づくたびに噂される恒例行事だ。
そんな中、スマートフォンのイヤフォンジャックに差し込んだカードリーダーを用いた「モバイルペイメント」サービスが多く立ち上がっている。急成長を遂げている「Square」を皮切りに、日本国内でも「PayPal Here」「楽天スマートペイ」など、続々とサービスが登場。
海外ではすでにヒートアップしつつあり、「Square」は昨秋、年間決済処理額が100億ドルに達したと発表している。タブレット端末でのクレジット決済を簡単に実現させるこれらの「モバイルペイメント」サービスは、カード決済システムの導入コストを大幅に軽減するものであり、中小の小売店や飲食店などでの導入が見込まれている。
「てがるに かんたん いつでも」を掲げる「Coiney(コイニー)」は、純国産のモバイルペイメントサービス。幅3cmの円型カードリーダーが特徴だ(ちなみに「Square」は四角形、「PayPal Here」は三角形のカードリーダーを使用)。決済時には、専用アプリを立ち上げて金額を指定、そのうえでカードリーダーにクレジットカードをスワイプする。支払者は画面にサインをして、自身のメールアドレスを指定すれば、そのアドレス宛にレシートが送信される仕組みだ。
「使えるお店を増やす」ことにフォーカスしたCoineyが想定するのは、宅配サービスでの決済、あるいは移動販売やフリーマーケット、小規模店などでの迅速なモバイル・チェックアウトである。取引情報等はすべてデジタルデータで保存、またウェブ上の管理画面に同期されるので、離れた場所からでもすぐに決済の状況を確認することができる。セキュリティに関しては、高度な暗号化技術によって、カードリーダーにもスマートフォンにもデータが保存されない仕様となっている。
我が国ではおサイフケータイやNFC対応モデルが先行しているとはいえ、すべての小売業で利用できるわけではない。とりわけ、地域に根差した小規模店などは、コスト高になる専用リーダーの設置に躊躇しているという向きも多いことだろう。こうした小規模店、あるいは個人事業主にとっては、スマートフォンで気軽にカード決済できる利点は大きい。あるいは、個人間での金銭の授受なども気軽に行えるようになれば、クレジットカード利用の幅も大きく広がるといえるだろう。
(中島 駆/5時から作家塾(R))