クレジットカードの利用を「民主化」しようとしている新興企業がある。サンフランシスコに本拠を置くスクウェア(Square)だ。

 民主化と言っても、クレジットカードで支払いをする買い物客のためではない。モノやサービスを売る側がどんなに少額のビジネスであってもカード決済を受けられるようにするという、そちら側のための民主化のことである。

 カフェや花屋などの小規模事業者あるいは個人事業者にとって、クレジットカード決済はこれまで高嶺の花だった。まずカード会社による厳格な審査がある。それに無事通ったとしても、カードリーダーは有償だし、ネットワーク加入費、さらに月々の利用料に加えて、お客がクレジットカードを利用するたびに、その何%かがカード会社や仲介業者に徴収されるからだ。少額決済では、とてもペイしない。

 スクウェアは、この業界のルールを変えようとしている。

アメリカではiPhone、iPad、アンドロイド携帯などで利用可能。日本への進出はいつか?

 残念ながら、スクウェアのサービスは本稿執筆時点(2011年3月28日)ではアメリカ国内でしか利用できないが、その仕組みはいたってシンプルだ。同社のウェブサイトから申し込みをし、アプリをダウンロードするだけである。現在利用可能な端末は、iPhone、iPad、アンドロイド携帯。簡単な審査を通過すると、しばらくしてスクウェアから1.5センチ角ほどの白くて四角いカードリーダーが到着する。これをデバイスに差し込めば、今日からあなたも“スモールビジネスのオーナー”になれるのだ。

 たとえば、小さなカフェの店主、自作の壷を売りたいアーティスト、ランチタイムに路上に停めたトラックでハンバーガーを売る移動式弁当屋。そんな人々はたいてい、これまで上記に掲げた経済的な事情からクレジットカード決済をあきらめていたわけだが、このスクウェアがあれば問題はない。自分の携帯デバイスが、カードリーダーと同じように機能して、お客のクレジットカードによる支払いを処理してくれるのだ。日本ではお財布ケータイが進んでいるが、スクウェアはスマホやタブレットを商売道具にする仕組みと言える。