「運動」の驚くべき”癒し効果”にスポットを当てた研究が、今、世界的に注目を集めている。運動すると……「ストレスから守られる」「抗うつ薬に匹敵する”うつ改善効果”が得られる」「レジリエンス因子が増え、不安に強くなる」「遺伝と同レベルの認知症リスクを解消できる」「子どもの勉強への集中力が高まる、成績が上がる」など、その驚きの研究結果をまとめたのが”運動×神経科学”の第一人者であるジェニファー・ハイズ博士だ。彼女の研究は、ニューヨーク・タイムズ、BBC、CNN、ハフポストなど、多数の国際的メディアに取り上げられて話題を呼んでいる。その内容を一般向けにわかりやすくまとめた初の著書の邦訳版『うつは運動で消える 神経科学が解き明かした「心の不調」のリセット法』が発売された。今回は、本書の内容の一部を特別に公開する。

「ストレスに弱い人」に決定的に欠けている“たった1つの習慣”photo:Adobe Stock

ストレスからあなたを守る「副交感神経」の働き

 ストレスがかかると、交感神経系が優位になります。また、ストレスは心臓を収縮させて動悸を激しくします。

 一方、副交感神経系は心臓がリラックスして血液を送り出せるように、重石となっている交感神経系を持ち上げる役割を果たしているのです。

 しかし、交感神経系はストレス要因が強まるにつれてどんどん重くなります。そしてある時点で持ち上げられないほど重くなり、副交感神経系がギブアップするのです。

運動すると、副交感神経が強くなる

 そこで運動です。定期的な運動は副交感神経系を強化し、運動するたびに増強します。そしてついには、副交感神経系が重い交感神経系の負荷をどんどん持ち上げられるようになるのです。

 するとあなたは身体的に強くなり、今まで以上に速く、強く体を動かせるようになります。精神的にも強くなり、日常生活のストレス要因への反応も少なくなるのです。活動的になり、不機嫌になりにくく、落ち込みにくくもなるのです。

(本原稿は、ジェニファー・ハイズ著、鹿田昌美訳『うつは運動で消える ~神経科学が解き明かした「心の不調」のリセット法』の内容を抜粋・編集したものです)

ジェニファー・ハイズ

世界トップのキネシオロジー(運動科学)学科を擁するカナダ・マクマスター大学のニューロフィットラボのディレクターであり、運動と神経科学研究の第一人者。主に、身体運動がメンタルヘルスや認知能力にもたらす影響について研究し、受賞多数。その研究は、ニューヨーク・タイムズでの特集をはじめ、CNN、NBC、BBC、ハフポスト、CBSなど、国際的メディアの注目を集めている。初の著書の邦訳版『うつは運動で消える』が2022年9月7日に発売。