――投資家向けコラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
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オランダの半導体製造装置大手ASMLは好不況の波が激しい業界において、極めて優位な立場を維持している。市場が1年、あるいは2年落ち込んだくらいでは、野心的な事業拡大計画の一部を棚上げする理由にはならない。
半導体製造装置を取り巻く足元の事業環境は好ましくない。先行きに対する期待も持ちにくい。半導体メーカーはパソコンやスマートフォンといった主要市場での需要低迷が打撃となり、設備投資計画の縮小を急いでいる。データセンターの市場でさえ、かつての熱気に後退がみられる。半導体製造装置への投資額は今年、総額990億ドル(約13兆8500億円)に達するとの見通しを業界団体のSEMIは9月下旬に発表した。この数字は過去最高であるものの、SEMIがその3カ月ほど前に示した予測を16%下回る。2023年は2%減少する見通しだという。
こうした中でASMLが生産拡大を目指すのは不思議なタイミングに映るかもしれない。同社は11日のアナリスト向け説明会で、年間の設備投資額は25年までに15億ユーロ(約2200億円)に達するとの見通しを示した。1年前に示した見通しからは50%増えた。設備投資は生産能力の大幅拡大に充てるという。先端品である「極端紫外線(EUV)露光装置」の25年の生産台数は約90台で、来年の生産見通しからは50%増となる。