近年、中学受験では「大学付属校」人気が高まり、激戦となっています。
「中学受験 大学付属校合格バイブル」の著者で、早慶をはじめとする大学付属校専門の中学受験塾を経営されている野田英夫氏は、大学付属校の入試問題には、基本的な問題が多く進学校のような難問が少ないので、付属校に特化した対策をすれば偏差値が足りていない子でも逆転合格がかないやすいといいます。本書から、知られざる付属校受験の実態や、合格のためのノウハウの一部をお伝えしていきます。

【大学付属校の中学受験】ケアレスミスは致命傷! 算数でよくある例とは?Photo: Adobe Stock

基本的な問題では絶対にミスは許されない

 中学受験の本番が迫ってきている昨今。本番の緊張状態の中でも、とにかく不注意のミスを避けるようにしなければなりません。特に基本的な問題が多い大学付属校においては、ケアレスミスが致命傷になります。

 算数でよくある例に、考え方も計算も合っていたのに、最後の単位換算で間違えてしまう子が多くいます。特に多くの子が苦手としているのが、時間の単位換算です。

 たとえば「速さ」の問題で、「何時間何分ですか?」と聞かれることがあります。そのような問いに「1.5時間」などと答えてしまうのです。「何時間何分と聞かれているよ」と伝えても、「そうか、じゃあ1時間5分だね」と。

 時計を使い慣れた大人にとってはピンとこないかもしれませんが、「10集まったら繰り上がり」の十進法になじんだ小学生にとって、60で位が変わるというのはとても難しいのです。特に焦ってたり、緊張したりすると間違える子は多い。1.5時間を問題の要求する「1時間30分」に換算できるようになるには、時間の単位換算に慣れなければなりません。

 時間から分、分から秒、またその逆、小数パターンと分数パターンなど、クイズをするような感覚で、換算できるようにしておきましょう。

 親御さんも「まさか時計の換算ができない」とは思っていないので、見落としがちなところです。速さの問題は頻出単元。時間の単位換算までを含めてのチェックが必要です。

 ご家庭でも意識的に、「じゃあ、1.5時間後にご飯ね」などという会話を交わすようにしておくと、時計の概念が身につきやすくなります。

付属校の入試問題に「数学」は必要ない

 ちなみに、偏差値上位の進学校の入試問題の傾向を見ていくと、数学の解法を使いたくなるときがあります。数学で教えると、苦労しないで正解にたどり着けるからです。そのため、大手進学塾では「数学」を使って指導している講師もいます。「数学の知識を知っていて当たり前」という出題もありますから、教えざるをえない感もあると思います。

 一方、最近の偏差値上位の付属校には、難しい問題も目につきますが、「数学で解いてね」というメッセージは感じ取れません。数学に比べ回りくどい解き方になりますが、算数の範囲で解けない出題はないのです。回りくどく考えて解く過程が本来、算数で培われるべきひらめき、発想力であり、この部分を使わないと後々の成長過程で、創造力が育ちにくくなるからです。結論として、付属校には「数学は必要ない」ということ。ここでも大学受験を前提としていない付属校の入試問題の目的が見えてきます。

*本記事は、野田英夫著「大学付属校合格バイブル」より、抜粋・編集したものです。