故人には感謝しかない、ホントはそんなことを言ったほうがいいのかもしれないけど、何より俺はショックだったし、寂しいという気持ちが一番だ。人は等しく逝ってしまう。そんなことはわかっているが……それでも寂しくあり、むなしいという思いに駆られたのが正直なところだった。

 それでも下ばかり向いていたら、大病を患い、最後の最後までアントニオ猪木を貫き、アントニオ猪木として逝かれた猪木さんに合わせる顔がないなという思いもある。

誰も猪木さんを超えることはできない

 俺は全日本プロレス時代から、目標とするレスラーの一人として、猪木さんの名前を堂々と挙げていた。猪木さんが必殺技にしていた延髄斬りや卍固めも使わせてもらった。それくらい猪木さんをリスペクトしていたし、いつかは猪木さんを超えるレスラーになるというのが、若き日の天龍源一郎の原動力の一つでもあった。

 だから後年、東京ドームのメインイベントで猪木さんと戦えたことは誇らしかったし、少しは猪木さんに近づけたんじゃないかと自負もしている。

 だからと言って、誰も猪木さんを超えることはできない。おそらくこの先も超える存在は出てこないだろう。なぜなら、アントニオ猪木はいつ何時(なんどき)、何があろうと、永遠のアントニオ猪木だからだ。