「今の星野リゾートは、この本がなければ存在しなかった」。星野リゾート・星野佳路代表がこう語るのが『社員の力で最高のチームをつくる』だ。なぜ本書は、多くの読者に読み継がれているのか? それは、本書の内容をそのまま実行するだけで組織を劇的に変えることができるからだ。星野氏はこうも語っている。「書かれている内容を一言一句、そのまま実践することだ」。本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、チームを劇的に変えるメソッドを紹介していく。(構成:長沼良和)

社員の力で最高のチームをつくるPhoto: Adobe Stock

コロナ禍でも勝ち続ける企業

 新型コロナウイルスの影響で、インバウンドが消えてなくなった。国内旅行も制限され、日本の観光業界は瀕死の状態だった。

 そんななかでも、変わらず元気な企業が星野リゾートである。

 星野リゾートは、コロナ禍にもかかわらず果敢に新ブランドを立ち上げ、積極的な姿勢を取っている。

 そんな星野リゾートの星野佳路社長は、本書を経営の教科書として活用し、このように絶賛する。

私の経営者人生で最も影響を受けたのが本書だ(P.1) 

星野リゾートの経営の秘訣「エンパワーメント」

 星野リゾートは、独自の経営手法で近年躍進している。

 その躍進の原動力が、本書で紹介されている「エンパワーメント」である。

 一般的にエンパワーメントというと「社員に意思決定の権限を与えること」だと思われがちだが、本書のいうエンパワーメントはちょっと違う。

 ここでいうエンパワーメントとは、「自立した社員が自らの力で仕事を進める環境をつくる取り組み」のこと。

 社員が本来持っているパワーを解き放つことで、会社を成長させるのである。

エンパワーメントが実現すれば、社員は最善のアイデアを生み、最高の仕事をするようになります。熱意をもって、自分のこととして、そして誇りをもって仕事に取り組みます(P.4) 

 星野リゾートが躍進した理由は、このエンパワーメントを徹底したことにある。

 星野社長はこの本を熟読して星野リゾートを再建し、現在の巨大企業をつくり上げるまでになった。

 ただし、エンパワーメントを使いこなせるようになるまでの道のりは大変だったと星野氏は振り返っている。

 この考え方を組織に浸透させるためには、粘り強い取り組みが必要となるのだ。

トップの覚悟がエンパワーメントの成否を握る

 本書の通りにエンパワーメントを実践できるかは、覚悟の問題だ。

エンパワーメントの実現には多くの困難があり、道は平坦ではありませんが、その苦労を埋め合わせて余りある成果――高い品質、よりよいサービス、強い競争力、低コスト、顧客ニーズへの柔軟な対応、自分ごととして仕事に取り組む優秀な社員たちなど――が手に入ることを私たちは知っています(P.12) 

 簡単な取り組みにはならないだろう。 

 ただ、企業のトップがやり抜くと決めれば、その見返りは大きなものとして返ってくるはずだ。