『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』では、どんなチームや企業にも存在する「組織文化」をテーマに、それを知り、変え、そして進化させていくための方法を紹介しています。なぜいま「組織文化」が重要なのか。本連載では本書第一章に収録した原稿を特別公開中です(「日本企業が世界で勝つには「らしさ」が最大の武器になる」「「システム思考」を生かして組織文化を理解しよう」「成果を出したいなら「オフ・ザ・フィールド」に目を向けよう」)。今回は、組織文化は簡単に模倣されないからこそ、唯一無二の武器になるということをお伝えします。

コロナ禍が残酷に暴いた!「組織文化」の強い会社と弱い会社Photo: AdobeStock

 組織文化、とりわけウィニングカルチャーを大切にすべきだと私が伝える背景には、それが決してほかには模倣することのできないものだからという理由もあります。

 企業にはそれぞれ唯一無二の組織文化があります。言い換えれば、それぞれ独自のウィニングカルチャーが存在するのです。

 優れた企業の組織文化をまねして自分たちの企業に移植しようとしても、基本的には機能しません。構成要素が異なる組織に、まったく別の組織文化を埋め込んでも機能するはずはありません。ウィンドウズOS(オペレーティングシステム)上でしか動かないアプリを、マックOS上で使おうとしても動かないのと同じです。

 組織に属するそれぞれの人のあり方や営み、日々交わされる言葉、行動、これらを規定する制度や人々が共有する言葉にならない価値観を通じて、その組織にしか通用しない文化が醸成されていきます。

 ビジネスモデルや製品、サービスは簡単に模倣されますが、組織文化は、その組織を構成するあらゆる部分が影響してにじみ出るものだからこそ模倣されません。つまり企業にとって最大の個性であり、強みにもなるのが組織文化なのです。

 未来を予測することの難しいこれからの時代は、自分たちの組織文化を知り、その独自性を強めていくことが重要な意味を持ちます。

 社会が劇的に変わると、企業も環境の変化に適応すべく、それまでの常識を疑い、過去の成功体験を手放して変革する必要に迫られます。時には企業の根幹をなす組織文化そのものを、大きく方向転換しなければならないこともあるでしょう。

 その時に初めて自分たちの組織文化を知ることからスタートしていては、変化に対応できずに手遅れになってしまいます。組織文化にメスを入れず、人事制度や働き方、ルールといった目に見える部分だけを変えても、組織は大きく変わりません。大火事をじょうろの水で消すようなものです。

 そんな事態に陥らないためにも、リーダーは日頃から自分たちの組織文化を把握し、目標を達成するために現在の組織文化が最適なのかを問い続けなくてはなりません。