不安や悩みが尽きない。寝る前にイヤなことを思い出して、眠れなくなるなんてことも……。そこで参考にしたいのが、感動小説『精神科医Tomyが教える 心の執着の手放し方』(ダイヤモンド社)だ。
ゲイのカミングアウト、パートナーとの死別、うつ病の発症……苦しんだ末にたどり着いた、自分らしさに裏づけられた説得力ある言葉。とても読みやすいオムニバス形式の8つのショートストーリーは、ふと心が落ち込んだとき、そっと心の荷物を手放すための優しい言葉を授けてくれる。voicy「精神科医Tomy きょうのひとこと」の心がスッと軽くなる“言葉の精神安定剤”で、気分はスッキリ、今日がラクになる!

【精神科医が教える】仕事ができる人はやっている…「こだわり」が「執着」にならない“シンプルにして王道の手法”

「こだわり」と「自己満足」の違い

「こだわりを持つ」ということは、一般的にポジティブな意味合いで使われる言葉です。「こだわりをもって仕事をする」といえば、とても前向きに仕事に打ち込んでいるようで、悪い印象を与えません。

ただし、場合によっては、こだわりが足を引っ張ることにもなりかねません。こだわりが「固執」とか「執着」というネガティブな意味合いを持つようになるのです。ちょっとした流行やトレンドに左右されず、自分なりのこだわりを貫いて仕事をする。そんな信念に共感して、ある一定のファンがついたりして成功体験を得ると、だんだんこだわりが強くなりすぎることがあります。

世の中のニーズと自分のこだわりのベクトルが合致していれば、それは良い方向に働きます。しかし、誰も望んでないようなことにこだわり始めると、単なる自己満足に陥ってしまいます。

それは他人から求められることなのか?

だからといって、こだわりがないほうがよいのかといえば、そういうわけではありません。世の中のトレンドに風見鶏のように左右されたり、誰かの意見をそのまま受け入れることばかりだと、その人が手がけることに魅力が感じられなくなるものです。

このバランスが大事なわけですが、じゃあ、どうすればいいのか? まず自分のこだわりを持つということは、悪いことではありません。ポイントは「自分のこだわりは、他人から必要とされてるものか?」という観点です。

こだわりが空回りに終わるパターン

たとえば、料理人が産地を厳選して食材を取り寄せて、こだわりのメニューを開発したとします。これまで以上に食材のコストが上がり、調理にすごく手間暇がかかるから、メニューの単価が飛び抜けて高くなる。でも、他の人が食べてみると、飛び抜けて美味しいわけではない。むしろ、味のレベルはたいして変わらない

うまく宣伝すれば、一時的には人気メニューになるかもしれませんが、おそらく味相応の価格でないこともあって、その料理人のこだわりは空回りに終わる可能性が高いですね。これは単純化した例に過ぎませんが、「自分のこだわりを誰か必要としてくれるのか?」という観点をともなっていないと、そのこだわりが空回りしやすいです。

「再現性」と「生産性」を高めることにつながる

客観的な視点をともなうことによって、生産性が高まるともいえます。また、自分が知らない分野で右も左もわからず、必死になってつくり上げたものが、たまたま受け入れられると、それが落とし穴になりがちです。その成功体験が、自分のこだわりを醸成するからです。

そこで客観的な視点をもたないまま突き進んでしまうと、その成功体験の再現性が失われてしまうというわけです。いわれてみれば当たり前のことかもしれませんが、主観的なこだわりと客観的なニーズの両輪をバランスよく兼ね備えることが大切。意外と見落としがちなことだからこそ、心の中で意識しておきたいものですね。

本稿は『精神科医Tomyが教える 心の執着の手放し方』(ダイヤモンド社)の著者が日々お届けする“心のサプリメント”です。