ファーストクラスには日々、さまざまなお客様がご搭乗されます。CAは多くのお客様をおもてなししているため、フライトを終えると一人一人のお客様を鮮明に覚えていることは難しいものです。しかし、フライトが終わった後でも印象に残っているお客様がいらっしゃいます。今日は、多くのお客様のなかでも、いつまでも印象に残るエグゼクティブの共通点をご紹介します。(CCI代表取締役・元国際線チーフパーサー 山本洋子)
実はできない人が多い!?たった一つの振る舞いがもつ力
印象に残る人とそうでない人の違いはただひとつ。初対面から相手の「名前を呼ぶ」ことです。簡単なことのようで、実は難しいことです。
ビジネスシーンにおいて、初対面の人と名刺交換をし、相手の名前を確認して、名前でお呼びすることは当たり前と思うかもしれません。それが一対一の場合であれば、相手の名前を覚え名前で呼ぶことはできるのでしょう。
しかし、多くの人と名刺交換をするような場面では、一人一人の名前を一度に覚えることは容易ではありません。つい役職で呼んでみたり、交換した名刺を確認しながら名前を呼んだりしてしまいがちです。そして別れ際には、相手の名前は完全に頭に残っていないなんてことは、よくあることです。
あるヨーロッパ便のファーストクラスを乗務したときのことです。搭乗が始まると、チーフパーサーは飛行機の一番前のドアサイドでお客様をお出迎えします。そして一人一人を座席までご案内します。ファーストクラスのお客様には名前をお呼びしてサービスすることが基本ですので、フライト前の打ち合わせで、名前と座席番号を確認し、フライトが始まる前までに名前を覚えます。
誰もが知る著名人であれば、ご搭乗時に顔を見ただけでお名前がわかるのですが、たとえ有名な企業経営者であっても顔と名前が一致することはあまりありません。お客様がご自分の座席に着かれて初めて名前がわかるという状況です。
その便には、ある食品メーカーの社長がご搭乗になりました。初対面にして、一流の振る舞いは違うと感じ、CAとして「敗北感」を感じたエピソードをご紹介します。