不安や悩みが尽きない。寝る前にイヤなことを思い出して、眠れなくなるなんてことも……。そこで参考にしたいのが、感動小説『精神科医Tomyが教える 心の執着の手放し方』(ダイヤモンド社)だ。
ゲイのカミングアウト、パートナーとの死別、うつ病の発症……苦しんだ末にたどり着いた、自分らしさに裏づけられた説得力ある言葉。とても読みやすいオムニバス形式の8つのショートストーリーは、ふと心が落ち込んだとき、そっと心の荷物を手放すための優しい言葉を授けてくれる。voicy「精神科医Tomy きょうのひとこと」の心がスッと軽くなる“言葉の精神安定剤”で、気分はスッキリ、今日がラクになる!
完全な安定なんてない
アメリカの心理学者アブラハム・マズローの有名な「欲求5段階説」では、人の欲求は「生理的欲求」からはじまり「安全欲求」「社会的欲求」、そして「承認欲求」「自己実現欲求」と進んでいくとされます。低次の欲求が満たされれば、だんだん高次の欲求を満たそうとしていくと考えられたのですね。
心身ともに健康で、経済的にも安定した生活を送りたいというのは、下から2段階目の基礎的な「安全欲求」ともいえますが、そもそも完全な安定なんてありません。
日常生活でも、なにかにチャレンジしようとすれば、大なり小なりリスクがともないます。リスクが大きければチャレンジを踏みとどまったり、リスクを負ってでも思い切って挑むこともあります。ここに、完全な安定はないわけです。
完全な安定を求めるのはナンセンス
本当にやりたいことがあるんだったら、ありもしない完全な安定を求めて踏みとどまるというのは、基本的にはナンセンスだと思うんです。
致命的なダメージを受けるとか、家族を路頭に迷わせる可能性が高いというのであれば、話は別ですけれども、「前例がない」「どうなるかわからない」という漠然とした思いを根拠に一歩踏み出さないというのは、ちょっと違うと思うんですね。
大企業に勤めていることは無難なのか
たとえば、大企業に勤めている人が、いろいろと考えた末に独立・起業しようと思ったとします。もちろん失敗するリスクはともないますが、そのまま大企業に勤め続けることが、雇用の安定を保障するかといえば、必ずしもそうとはいえません。
大きな組織に属してると、この先も当たり前のように同じような環境で働き続けられると思い込みがちですが、ちょっと長い目で見れば、本当に安定してるわけじゃないんですよね。
大企業に限らず、本当に安定した環境なんかないわけです。現状維持したほうがラクではありますが、無難なわけではないのですから、チャレンジしたいことがどうしてもあるんだったら、少なくとも検討はしてみるべきでしょう。
人は必ず死ぬ存在
もっと広い視野で考えてみれば、人は永遠に健康を保って生きられるわけではありません。いずれ年老いて、やりたいことがやりづらくなり、命が尽きる存在なのです。人は必ず死ぬという面からも、完全な安定はないわけです。
そういうふうに究極的な考えからしても、自分のやりたいことがはっきりしてる場合、安定しないからやらないという選択は、あまり検討するべきじゃないと思います。
ただし、やりたいことがあるわけではなく、「現状から逃げたい」という思いが先立っている場合は、要注意です。逃げ出したいだけで、その先にはなにもない状態は、リスクしかないようなものです。そういう場合を除けば、人生というのは基本的に「やりたいことは、やりたいうちにやっておくべき」だと思うんです。
本稿は『精神科医Tomyが教える 心の執着の手放し方』(ダイヤモンド社)の著者が日々お届けする“心のサプリメント”です。