「今の星野リゾートは、この本がなければ存在しなかった」。星野リゾート・星野佳路代表がこう語るのが『社員の力で最高のチームをつくる』だ。なぜ本書は、多くの読者に読み継がれているのか? それは、本書の内容をそのまま実行するだけで組織を劇的に変えることができるからだ。星野氏はこうも語っている。「書かれている内容を一言一句、そのまま実践することだ」。本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、チームを劇的に変えるメソッドを紹介していく。(構成:長沼良和)

社員の力で最高のチームをつくるPhoto: Adobe Stock

エンパワーメントを実現するための3つの鍵

 星野リゾートを常勝企業に成長させた原動力である「エンパワーメント」

 エンパワーメントとは、自律した社員が自らの力で仕事を進めていける環境をつくる取り組みのことだ。

 トップダウンで上司に答えをもらうのではなく、社員それぞれが自分で最善の答えを見つけ出し、それにしたがって行動できるようにすることを意味する。

 エンパワーメントを実現するためには3つの鍵がある。

第1の鍵:すべての社員と情報を共有する
第2の鍵:境界線によって自律した働き方を促す
第3の鍵:セルフマネジメント・チームを育てる

 今回はそのなかから第1の鍵「すべての社員と情報を共有する」を紹介しよう。

「社外秘情報」という言葉は絶対NG

 リーダーが意思決定を行うのに必要な情報は、全社員にすべてシェアすることが重要だ。

 ましてや「社外秘情報」として、一部の社員だけがアクセスできる情報をつくるのはナンセンスだ。

 社外秘情報にアクセスできない社員は、それを見てどう思うだろう?

 情報を制限された自分は、会社に信頼されていないと感じるはずだ。

情報を制限された人は、たとえば、自分は会社の動きから取り残された、信頼されていない、情報を与えられたら悪用すると思われている、情報の意味を理解できないバカだと思われている……などと考えるのではないでしょうか(P.60)

 情報を制限すること自体がいろいろなメッセージを相手に伝えることになると、リーダーは認識しなければならない。

 社員を信頼することで、社員も会社を信頼してくれるようになる。

情報共有を通して「信頼」を伝える

 社内の情報はリアルタイムに全社員にシェアすることで、社員は安心して働けるようになり、上司を信頼してくれるようになる。

 自ら考え能動的に行動できる社員へと成長させることにもつながるだろう。

正確な情報をもっていなければ、責任ある仕事をすることができない。
正確な情報をもっていれば、責任ある仕事をせずにいられなくなる。(P.62)

 情報を制限するということ自体が、いろいろなメッセージを相手に伝えることになる。

 社員が会社に信頼されていないと感じたら、力を発揮できるわけがない。

 逆にいえば、重要な情報を共有することは、相手を信頼していると伝える一番の方法であると言えるだろう。

情報の共有をする第一歩

 とはいえ、リーダーはすべての情報を共有することに躊躇する傾向がある。

 機密性が高い情報ならなおさらだ。

 しかし、インターネットの爆発的成長にともない、情報の流れが制御不能になった今、情報を秘匿することはもはや不可能なのである。

 情報をすべて共有する第一歩を踏み出すのは、リーダーの心のなかであると自覚しなければならない。