韓国では緩和的な金融政策の継続期待に支えられ、不動産市場では「マンションの価格上昇は間違いない」といった強気心理が高まった。2022年7月末、韓国の住宅価格は過去最高を記録。その裏で、家計の債務残高が急速に増加している。21年7~9月期、韓国の家計債務残高は対GDP比106.0%の過去最高に。22年1~3月期も同105.4%と高い水準だ。支出が収入を上回り、借り入れに頼る家計が増えた。生活費や債務返済のために、ビットコインなどの仮想通貨に投資をする人が増えているという。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
韓国の家計が抱える債務問題
最近、金利上昇の影響もあり、主要国の住宅価格の下落が鮮明だ。8月以降、韓国でも住宅価格の下落が顕著になり始めた。韓国の住宅価格は今後、さらに下落する可能性がありそうだ。懸念されるのは、韓国の家計が抱える債務問題の深刻化だ。
これまでも韓国経済にとって、家計債務残高の増加は、最大のリスク要因の一つと考えられてきた。近年、韓国では首都圏で住む場所を確保するため、住宅ローンの借り入れに依存する家計が増えている。雇用・所得環境の厳しさから脱け出すため、若年層を中心に、資金を借り入れて株式などを短期目線で取引する人も増えている。そうした状況が加速し、家計の債務残高は持続困難な水準に達している。
内外の金利上昇などによって住宅価格が下落すれば、韓国経済の成長率は低下し、家計の元利金返済負担は増すだろう。状況次第では、韓国の金融システムの不安定感が高まり、急速に投資資金が流出する恐れも排除できない。