【最新の認知症治療を実践する脳のカリスマが30年超の長寿研究から導いた幸せな生き方】
2010年代には大ベストセラー『100歳までボケない101の方法 脳とこころのアンチエイジング』で100歳ブームを巻き起こした医学博士・白澤卓二医師渾身の自信作『長寿脳──120歳まで健康に生きる方法』が完成。
人間の限界寿命とされる120歳まで生きる方法を提示します。
現在の脳のパフォーマンスを上げて、将来寝たきりや認知症にならずに長寿を目指す方法論が満載です。

長生きしたけりゃ、ストレスを受け続けてはいけない科学的根拠Photo: Adobe Stock

テロメアが短くなる原因

 2009年に「寿命のカギを握るテロメアとテロメラーゼ酵素の仕組みの発見」でノーベル生理学・医学賞を受賞した3人のうちの1人、エリザベス・H・ブラックバーン教授のもとにいた心理学研究者が、白血球のテロメアについて研究成果を発表しています。

 その論文によると、虐待を受けた人、介護をしているケアキーパー、アルツハイマー病の家族をケアしている介護者など、非常にストレスフルな生活を余儀なくされている人たちのテロメアを調べると、総じて短くなっていることがわかったのです。

「テロメアの長さはストレスに影響される」というのが彼女の一つの結論。彼女のほかにも複数の同じような論文が出ています。

 白血球以外の臓器のテロメアについて言及している論文は今のところ見当たりませんが、仮に他の臓器で研究したとしても、同様の結論が出るのではないかと思います。

非常なストレスを受け続けないことは重要

 日ごろから「こんなことをしていたら寿命が縮まるな」と思いながら、仕事や家族の世話をしている人は、ドキッとしたかもしれません。

 あるいは「寿命が縮まった!」と感じるほどのアクシデントを経験した人も然り。実際にテロメアが短くなっている可能性があります。

 親が認知症になっても子が面倒を見続ければ、親は長生きできるかもしれないけど、そのために子のテロメアが短くなる可能性は濃厚です。最近注目されているヤングケアラーも心配ですね。非常なストレスを受け続けないことは重要ですから、心にとめておいてください。

 とはいえ私たちには自力でテロメアを伸ばすことができる幹細胞があるので、「一時的なストレスでテロメアが短くなって死が近づく」ということはありません。

本原稿は、白澤卓二著『長寿脳──120歳まで健康に生きる方法』からの抜粋です。この本では、科学的に脳を若返らせ、寿命を延ばすことを目指す方法を紹介しています。(次回へ続く)

監修 お茶の水健康長寿クリニック院長・医学博士・医師 白澤卓二
1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大学院医学研究科博士課程修了。現在、お茶の水健康長寿クリニック院長。