巨大で複雑な1.5万人企業、コカ・コーラ ボトラーズジャパンを「小回りが利く組織」に変えた人事秘策Photo by Yusuke Yuzawa

世界的な飲料メーカーであるコカ・コーラ社の日本における製品製造・販売を手掛けるコカ・コーラ ボトラーズジャパン。本稿では、前編・後編の2回に分けて、同社の執行役員・最高人事責任者兼 人事・総務本部長の上村成彦氏が実践した人事施策を取り上げる。前編では、次世代リーダーの育成方法を解説する。(文/奥田由意)

※本記事は、2022年9月2日に開催されたオンラインイベント「変化に適応できる人材育成と組織開発」の内容を基に再編集したものです。

「ボトラー社」再編で
2017年に人事戦略を刷新

 変革を導く次世代リーダーは、どのようにして育成していけば良いのでしょうか。特に、再編によって従業員数万人規模に成長した巨大企業においては、リーダー層の育成だけでなく、組織全体の底上げが求められます。そのためには、全社員への組織風土の浸透から働く環境づくりなど、全方位で人事戦略の立て直しが必須となります。

 本稿では、実際に私が取り組んだ弊社の人事施策の例を基に解説していきます。本題に入る前に、飲料業界の状況と当社組織について簡単に説明します。

 飲料業界の市場は、人口減少により縮小傾向にあります。その中で、お茶やミネラルウオーターなどで構成される日本の清涼飲料市場は成長しており、今やカテゴリー数は世界で上位。製品は多様化しており、生産量は1970年代に約400万キロリットルだったものが、2015年には約6倍まで増えています。

 ザ コカ・コーラ カンパニーは1886年に米・アトランタで創業し、現在、世界200以上の国と地域で飲料製品を提供しています。私が所属するコカ・コーラ ボトラーズジャパンは、日本のコカ・コーラシステムにおいて約9割の販売量を担っており、製品製造、物流、販売、回収、リサイクルを担当しています。

 飲料自動販売機の数でいうと、全国に約225万台*あるうち、当社は約70万台分を担当しています。社員数は約1万5000人です。

*2021年12月末時点。一般社団法人日本自動販売システム機械工業会調査による

 清涼飲料市場の成長に伴い、日本の各地域にあった12のボトラー社(コカ・コーラ社製品の製造・販売会社)が統合を経て、17年に当社が誕生しました。

 19年には、会社を一枚岩の組織として強化するべく、企業理念とミッション・ビジョン・バリュー(以下、MVV)を刷新しました。ミッション(使命)を「すべての人にハッピーなひとときをお届けし、価値を創造する」とし、その価値観に基づいて、ビジョン(展望)、バリュー(価値)を定義し、人事戦略「People strategy」を作りました。

 MVVに沿った採用、人財育成、キャリアパス、人財の定着という4つの人事施策の柱を立て、さらにベースとして働く環境の整備にも力を入れてきました。次ページからは、人事戦略の中核である人財育成とキャリアパスについて、もう少し詳しく説明します。