サントリー社長に就任、鳥井信宏氏が「リーダーはちゃらんぽらんになれ」と語る理由Photo by Teppei Hori

1926年に米国シカゴで創立された世界有数の戦略系経営コンサルティング会社、A.T.カーニー。同社史上最年少で日本代表に就任した関灘茂氏が今回、話を聞くのは、サントリー創業者のひ孫であり、サントリーの国内酒類事業を統括する、サントリーホールディングスの鳥井信宏副社長だ。鳥井氏は、今年7月に発足する新会社「サントリー」の社長就任も発表されている。サントリーの失敗と成功の物語、挑戦し続ける組織と人材の育み方、ビール事業の意味と展望、ネクストリーダーへの進言などを3回にわたってお届けする。最終回となる今回は、サステナビリティやカーボンニュートラル、自然とテクノロジー、2022年7月に設立する新会社「サントリー」などについてを聞いた。(構成/ダイヤモンド社 編集委員 長谷川幸光、文/奥田由意)

「自然の力」と「テクノロジー」の恩恵によって
さらにおいしいものができていく時代になった

関灘茂氏(以下、関灘) 前回は、新たな価値を生み出し続けるメカニズムや、ビール事業の意味合いと展望を伺いました。

鳥井信宏氏(以下、鳥井) どうも、ずっと「運のいい会社」としか言っていない気がしますね(笑)。

関灘 もちろん運だけではなく、酒税込みの売り上げが2.5兆円、従業員数4万人を超えるまでに成長してきたのは、長らく掲げていらっしゃる「Growing for Good」という志の結果ということなのだと思います。

 この「Good」についてですが、世界では、環境、人権、ダイバーシティ&インクルージョン、富の集中・格差の拡大など、さまざまな問題が国内外で指摘されています。ともすれば、「Growing」しか意識していないように見える会社もある中、サントリーグループはどのような問題意識を持ち、どのような意味合いを「Good」に込めているのでしょうか。

鳥井 サントリーグループのミッションは、前回でも触れた「人と自然と響きあう」です。これは手前みそながら、よくできた言葉だと思います。ひとりひとりの社員が、このミッションはどういう意味なのかを考え、人と自然、そしてサントリーで働く人間が「響きあえているか」を意識することが重要です。

「人」、つまり、お客様、サプライヤー、物流、すべての人たちから信頼されるにはどうすべきか?「自然」にもいろいろな意味があります。「環境にとってどうなのか?」も常に配慮しなければいけません。社員には、そういうことを考えながら、仕事をしてほしいと思っています。

関灘 サントリーといえば、美術館やコンサートホールなど、芸術や文化に関する活動も歴史的に積み重ねられています。こうした文化を大切にする価値観も「Good」に込められているのでしょうか。

鳥井 日本経済新聞に連載された伊集院静氏の『琥珀の夢』(2016年7月〜2017年9月)は、サントリーの創業者・鳥井信治郎(とりい・しんじろう/1879〜1962年)を描いたものですが、この小説をはじめ、いろいろな評伝でも書かれているように、創業者は「お天道さまが見ている」と考える、信心深い人でした。

 社会に貢献し、文化を大切にすることも含め、その心が「Good」に影響していると思います。創業者の長男・吉太郎と結婚した私の祖母が、結婚するなり、舅の信治郎に写経を教えられてびっくりしたという話を聞いたこともあります。

関灘 サントリーのウイスキーブレンダーを紹介する動画を拝見しました。ブレンダーのみなさんの努力や技術の鍛錬がブレンディングに結実されている。しかし、最後の最後に味に大きな影響を与えるのは「お天道さま」であり、自然の力がものづくりのプロセスに含まれているといった文脈のお話がありました。

 これからの時代を担う「創造と変革のリーダー」たちも知りたいと思うのですが、運を味方に付けるために、経営者として意識していることはありますか?