2022年の中学受験者数は過去最大の5万人を記録し、中学受験の競争は激化している。東京・吉祥寺を中心に都内に展開する進学塾VAMOSは、「入塾テストなし・先着順」で生徒を選抜しないが、「普通の子ども」を有名難関校に続々と合格させると話題の塾だ。VAMOS代表を務め、新刊『ひとりっ子の学力の伸ばし方』(ダイヤモンド社)の著者である富永雄輔氏は、「中学受験では、偏差値だけでなく、子どもの特徴や家庭の方針にあった志望校選びが極めて大事だ」と強調する。
自ら多くの中学を訪問し、中高一貫校の最新事情に明るい富永氏に、近年注目度が上がっている進学校について話を聞いた。本記事では、豊島岡女子学園、ドルトン東京学園を取り上げて、富永氏独自の視点から、各学校の魅力と人気の理由に迫る。

理系だらけの女子校、期末試験ナシ、志願者殺到の進学校が打ち出す驚きの教育Photo: Adobe Stock

注目の進学校(1):豊島岡女子学園中学校

 豊島岡女子学園中学校(以下、豊島岡)は、池袋駅東口から直進するグリーン大通りに面する学校で、全国的に見てトップクラスの進学実績を誇る完全中高一貫の女子校です。

 私は、豊島岡ほど理系教育が進んでいる女子校はないと思います。元々中学入試の段階から理系の問題が難しくて理系が得意な子が多いというのは有名です。

 女子校といえば、グローバル教育とか伝統教育とか、いろんな教育をバランスよく打ち出す学校が多いですが、ここまで理系教育が際立っている女子校は、全国を見渡してもなかなかありません。

 女子校ではおそらく日本一と言えるくらい理系に進学する学生が多く、特に医歯薬系の学部に進学する学生が多いです。理系の学生が文系より多いのは、豊島岡と桜蔭ぐらいだと思います。

私立文系コースを廃止するほど徹底した理系

 都内の高校は、一般的に高校3年生になると、国立理系、国立文系、私立理系、私立文系にコースが分かれますが、豊島岡は私立文系のコースを廃止しました。

 ほとんどの女子校は、文系の学生の方が理系より多くて、文系と理系の割合が「7対3」ぐらいです。文系の中でも「私立文系」を選択する女子高生の割合は非常に多い傾向にあるのですが、豊島岡は私立文系コースを廃止する決断をしたのです。

 もちろん国立文系コースから私立文系を受験すればいいだけであって、別に私立の文系を受験しちゃいけないっていうわけではないんですけども、「最初から数学を捨てることはしない」「高3まで全員数学や理科を勉強する」という豊島岡の強いメッセージだと思います。

 これは学校にとって非常に勇気のいる決断だったのではないでしょうか。ともすると受験生が減ってしまうかもしれません。しかしながら、理系に力を入れたいと思っている保護者や学生にとっては素晴らしい学校だと思います。

ーー池袋の繁華街にある女子校ということで、立地が気になる保護者もいらっしゃるようですが、どんな子どもに向いている学校でしょうか。

 たいていの学校は、3時くらいに授業が終わって、6時とか6時半まで部活やその他の活動のために学校を開けていると思うんですが、豊島岡は5時半に学校を全て閉めてしまいます。これは池袋の繁華街に学校があるという立地を考えてのことでしょう。

 私立の学校の中には、通常の授業後に補修や大学受験の対策講座を設け、生徒が長時間学校で過ごせるようにしている学校もあります。一方で豊島岡は、池袋という場所の特性を第一に考えた学校運営を実践していると言えるのではないでしょうか。ちなみに、豊島岡は毎朝の運針を行うことが有名で、これは集中力を鍛えたり、基礎の大切さを実感したりすることを目的としているそうですが、しつけの面でもしっかりした学校と言えると思います。

 特に医歯薬系の進路を考えている子どもにとっては、同じ目標を持った友だちがたくさんいるということは、かけがえのない環境だと思います。先輩・後輩のつながりが大きい業界だと思うので、その後の人生の大きな財産になるような人の繋がりが作れることも大きな魅力でしょうね。