注目の進学校(2):ドルトン東京学園中等部

 ドルトン東京学園中等部(以下、ドルトン東京)は、2019年に開校した今最も注目を集める中高一貫校の一つで、日本一変わった学校と言っても過言ではありません。

 小田急線の成城学園前駅からバスで6分、京王線のつつじヶ丘駅からバスで12分の場所に立地し、広い敷地に最新の設備を備えた校舎があります。

 幼児教育の一つに「ドルトンプラン」という教育法があり、予備校の河合塾が経営母体となり、ドルトンプランを実践する学校を設立したということで話題になりました。

開校以来、倍率も偏差値も右肩上がり

 2019年に開校したばかりなので、まだ卒業生は出ておらず、進学実績は未知数ですが、とてつもない勢いで倍率と偏差値が上がっています。

 河合塾と連携している学校なので、この後、高2、高3の学生に対しては、河合塾のプログラムも活用されてくるのではないでしょうか。もしそうなってくれば、素晴らしい環境で中学から勉強できるうえに、大学入試の対策もバッチリで鬼に金棒だと評価する保護者も多いでしょう。

中間テストも期末テストも一切ナシ

 大学のように充実した施設に、最新のIT企業のオフィスのように洗練されたモダンな教室です。基本的には、手書きのノートはあまり使わず、PCやタブレットなどの個人端末を日常的に活用します。

 また、ホームルームに先生がやってくるのではなく、授業ごとに学生が教室を移動するアメリカンスクールのようなスタイルです。受身の授業ではなく、学生が能動的に発信する授業が徹底されています。

 さらに、驚かされるのは、中間テストや期末テストが一切ないことです。一般的な学校のように、試験前1週間を部活休みにして「この期間は勉強にあててください」というのではなく、日々の小テストや提出物などの課題で成績が評価されます。

 開校当初は、ありとあらゆることが新しすぎて、海のものとも山のものともつかないような学校だったんですが、今は大人気になっています。ちょうどコロナ禍の直前に学校がスタートしたのですが、コロナ禍以前から、オンライン配信やタブレットを活用した授業が実施されていました。

 新しいことに敏感な保護者にとって、非常に魅力的な学校だと思います。例えば図書館一つ挙げても、照明が時間帯によって変わるんです。環境づくりに対して、どの学校よりも力を入れていることがわかります。子どもが学びやすい環境づくりについては、多くの学校が掲げていますが、口だけでなく、ここまで本気で突き詰めて実行している学校はないと思います。

苦手なことよりも得意なことを伸ばす

ーードルトン東京の教育と、他の学校の教育との違いは何でしょうか?

 伝統的な日本教育との大きな違いは、「苦手なものより、得意なことを伸ばそう」という教育です。

 英語が得意な子はさらに英語を伸ばそうよ、理系が得意だから数学だけをどんどんやろうよといったことも、先生たちがものすごく打ち出していて、それに対していろんな仕掛けをしようとしています。学生が授業ごとに教室を移動するので学び方を自由に変えられたり、先生との距離を近くして発展的な学習を能動的にできるようにしたりしています。

 定期試験ではなく、小テストや提出課題で成績を評価するという仕組みも、「苦手のものは日常の授業で評価し、得意なものをガンガン伸ばしてあげた方が、今後の社会では役に立つ」というメッセージを打ち出したシステムではないでしょうか。

 この学校は、部活に対する考え方も違います。野球部がなかったりするなど、一般的な学校に比べて運動部が少なく、活動日も少ないです。部活に対する強制力はありません。全員が部活に入らなきゃいけないわけではありません。

 部活は放課後やりたい人が任意でやるもので、放課後の学校は開放するけど、部活にとらわれず自分の好きなことをやれる仕組みがあります。

学年を横断した「縦割のクラス」

 さらにこの学校のユニークなところは、「縦割り」のクラスがあるところです。一般的な日本の教育といえば、同じ年に生まれた子どもたちが30人くらい集まってクラスが構成されますよね。

 でもこの学校は違って、1日1回必ずある時間に、高1、中3、中2、中1が、5人ずつ集まってクラスで話し合いがあります。今はまだ開校4年目なので、高2と高3はいません。

 文化祭などの行事の打ち合わせや、日々の学校運営などが縦割のクラスで行われます。異学年の学生とのコミュニケーションや人間関係を学べるようになっているわけですね。

 一般的な学校では部活がその役割を果たしていたと思うんですが、運動部に対するアレルギーがある人や、ちょっと旧来の日本の教育にアレルギーがある人にとっては面白い試みだと思っています。せっかく中高一貫校で、6学年の学生が一緒の校舎にいるんだったら、年齢が離れた学生とも話をできた方が得られることも大きいはずです。

 部活の存在が薄い学校ですが、こういった他の仕組みで埋めているので、バランスが取れているなと感じます。

先生の負担を減らして、子どもの教育を充実させる

 ちなみに部活がない理由については、先生の負担を増やしたくないということを、学校が説明していました。ゆくゆくは、外部の先生を雇って部活を充実させることも考えているようです。

 学校教育において先生が疲弊しちゃったら元も子もないから、教師を疲弊させないために、教師の部活に対する過度な参加を避けているわけです。先生に余裕がなければ、子どもへの教育も充実しないでしょう。

 私立だからできることかもしれないんですけど、日本全国で問題になっている社会的な課題を学校が独自に解決しようとしていて、これからの日本の教育のモデルケースになっていく可能性を秘めている学校だと感じています。時代が大きく変わっていく中で、学校の在り方も変わっていく必要があるのなら、これくらい他とは違った学校があってもいいわけです。