部品

エネルギー問題の解決を目的に、国際協力によって核融合技術の実現を目指す「ITER計画」。その一環で製造されている実験炉に、部品を供給している中小メーカーがある。それが埼玉県入間郡に製造拠点を置く大和合金だ。同社は高い製造技術を持つほか、社員が望む限り、定年後も働き続けられるユニークな制度を持つ。最高齢の社員は87歳である。その創業秘話と、世界が認めた技術力の源泉に迫る。(ルポライター 吉村克己)

日本の中小素材メーカーが
核融合施設に部品供給

 太陽のような莫大なエネルギーを人間の手で作り出し、発電などへの応用を目指すのが「核融合」の研究だ。

 核融合燃料の一部である重水素やリチウムは、海水から採取できる。核融合燃料1グラムから生じるエネルギーは、石油約8トン(タンクローリー1台分)と同等だという試算もある。実用化すれば、人類が電力不足に悩む必要はないだろう。

 その実現に向け、「ITER(イーター、国際熱核融合実験炉)」と呼ぶ実験炉の稼働を目指す大型国際プロジェクトが進んでいる。日米欧露など七つの国と地域が参加しており、2025年に初点火し、2035年に核融合運転を始める予定だ。

 実は、この世界規模で準備が進む核融合施設に、部品を供給している日本の中小素材メーカーが存在する。それが、埼玉県入間郡に製造拠点を置く大和合金だ(本社は東京都板橋区)。社長の萩野源次郎(54歳)はこう語る。

「国内外それぞれの核融合研究機関から、昨年・今年と立て続けに受注できました。長年にわたってテスト材を供給する中で、当社の品質と開発レベルが認められたのでしょう」

 受注した製品は、特殊な「銅合金製」の管と板であり、いずれも核融合炉の中核をなす重要部品である。