エアコンのモーター異常による発火を防ぐ「プロテクター」で世界シェア7割、地震時のガス漏れを防ぐ「感震器」で国内シェア9割――。一般消費者を危険から守る「縁の下の力持ち」といえる製品を生み出し、国内外で高い支持を得ているのが生方製作所(愛知県名古屋市)だ。地方発の中小メーカーが、いかにして海外に進出し、プロテクターなどの商品を拡販できたのか。その背景に迫る。(ルポライター 吉村克己)
エアコンなどの発火を防ぐ
「プロテクター」で世界と戦う日本企業
私たちが普段何気なく使っている、エアコンや冷蔵庫などの家電製品には、送風や冷却のためのモーターが内蔵されている。
多くのモーターの内部には、異常発熱を防ぐ「モータープロテクター」(以下、プロテクター)という安全用デバイスが組み込まれている。家電製品が発火し、大事故になるケースを防ぐためだ。
名古屋市に本社を置くメーカー・生方製作所は、1975年の発売以来、このプロテクターを進化させ続けてきた。現在はプロテクター市場における世界シェアの70%を占めている。
正確に言うと、プロテクターは家電のコンプレッサー(空気を圧縮して動力源にする装置)の内部にあるモーターに取り付けられる。エアコンと冷蔵庫のほか、乾燥機や除湿器などにも使われている。
その仕組みは、モーターに異常な発熱や過電流が発生すると、プロテクターが即座に電流を止め、モーターを保護し、焼損を防ぐというものだ。
原理はシンプルだ。熱膨張係数の異なる2種類の金属を貼り合わせた構造で、熱が加わると曲がって離れ、電気回路を切り離す。これを「バイメタルスイッチ」と呼ぶ。生方製作所は、この機構の精密加工に優れている。
生方製作所は本社工場に加えて、中国浙江省寧波(ニンポー)市に2工場を持ち、中国国内のコンプレッサーメーカーにプロテクターを納めている。中国市場だけで見るとシェアは85%となる。