寒さが厳しくなってくるこの時季、気分が落ち込む、疲れやすい、十分寝ているのにまだ眠い、甘いものを無性に食べたくなる、人と会うのがおっくう……といった症状に悩まされていないだろうか。もしかしたら「冬季うつ病」かもしれない。特徴的な症状やセルフケア、治療について専門家に聞いた。
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SE(システムエンジニア)の鈴木真希子さん(仮名・28歳)は、2年前の11月ごろから出勤しようとするとめまいがするようになった。頭痛や吐き気を感じることもある。週末は15~16時間も眠り続けてベッドから起き上がれず、友人から誘われても出かけるのがおっくうで断ることが増えた。食べても食べても満たされず、家の中に食べるものがなくなると、夜中にコンビニに駆け込むことも。出勤できない日も多くなっていった。仕事で大きなストレスを感じているわけではなく、会社にはできれば行きたい。上司のすすめで精神科を受診したところ、冬季うつ病と診断された。
冬季うつ病と通常のうつ病との違いについて、「冬季うつ外来」を実施している朝がおクリニック(東京都日野市)院長の工藤吉尚医師は、「過眠と過食」と話す。
「気分の落ち込みなど、うつ病の主な症状にはほとんど違いはありませんが、違いが出やすいのが食事と睡眠です。通常のうつ病は、不眠や食欲の低下などが現れやすいのですが、冬季うつ病では逆に寝過ぎや食べ過ぎになるのが特徴的です。そのほか、一度発症すると毎年繰り返しやすいのが特徴で、20~40代の女性に多いという報告もあります」
冬季うつ病の主な症状には、次のようなものがある。
・気持ちが落ち込む
・今まで楽しんできたことが楽しめない
・ぐったりして疲れやすい
・活動量が低下
・眠気が強く睡眠時間が長くなる
・甘いものが欲しくなる
冬季うつ病は「季節性感情障害」(季節とともに症状が出たり消えたりするうつ病)の一つで、秋の終わり、または冬のはじめに発症し、春と夏の間に消失する場合に冬季うつ病と呼ばれる。1984年に精神科医のローゼンタールらにより「冬季うつ病」として初めて報告された。病気の発症時期として季節性があるのがポイントで、明らかな心理的原因となる出来事がないこと、少なくとも2年間冬季に症状が出ていることが診断の条件だ。