70代からの元気力 和田秀樹写真はイメージです Photo:PIXTA

高齢者専門の精神科医として、30年以上高齢者医療の現場に携わってきた和田秀樹氏が、新著『70代からの元気力』を発売。同書からの一部抜粋で、70代からの人生を充実させるためのヒントをお教えする。今回のテーマは、60代頃から訪れる心の不安、うつ、不眠を改善するコツについて。

60代からの心の疲れが
うつ状態につながる

 60代からは体だけでなく、心も疲れやすくなります。

 体の疲れはすぐ実感できますが、心の疲れは実感しにくいのが面倒な点です。

 ですから、知らず知らずのうちに、心の疲れは蓄積されていきます。そして何となく気分が落ち込んできます。その状態をそのままにしておくと、うつ状態につながることもあるのです。

 だからこそ、60代はとくに、上手に「心の休養」をする必要があります。

 60代は、そろそろ脳の老化、とくに前頭葉の委縮や機能低下が始まる年代。意欲が衰え、気分的な落ち込みが出てくるのも、珍しいことではありません。

 それに加えて、脳内の神経伝達物質・セロトニンが減ってきます。

 第2回でも触れたように、セロトニンは「幸福物質」という別名があるくらい、私たちの幸福感と結びついている物質。ですから、セロトニンが減ると、気分が沈んだり、ちょっとしたことでイライラしたりする、といったように感情が不安定になります。