正月うつ新年早々、遅刻や欠勤をしたり、イライラしたりする症状が表れていたら要注意です Photo:PIXTA

年末年始は、ビジネスパーソンにとって公私ともに1年で最も忙しい時期。年末から大掃除、年賀状作成、買い物などに追われ、年明けは実家への帰省、義両親など普段あまり付き合いのない親戚たちとのやりとりなどでぐったりした人。あるいは、家族で長期の海外旅行に出かけて疲れた人も少なくないだろう。日常とは違う時間の過ごし方をしたことによる疲労が積み重なると心配なのは、「正月うつ」だ。新年のスタートを切った今、知っておくべき対策を、精神科医・産業医として日々多くのビジネスパーソンのメンタル相談に乗っている奥田弘美氏に聞いた。(聞き手/ライター 羽根田真智)

「冬季うつ」を発症しやすい季節
不眠、遅刻、ミスが多発していないか

──正月明けなどに心身の調子を崩す人が少なくないと聞きます。

「正月うつ」から回復する方法、年末年始が忙しかった人は要注意!おくだ・ひろみ/医師(精神科、精神保健指定医)、日本医師会認定産業医 平成4年山口大学医学部卒。精神科医・産業医として精神科臨床および都内18カ所の企業で嘱託産業医として働く人の心身のストレスケアに携わっている。また執筆やマインドフルネス瞑想を広める活動もライフワークとして行っている。著書には『ストレス・疲れがみるみる消える 1分間どこでもマインドフルネス』(日本能率協会マネジメントセンター)、『心に折り合いをつけてうまいことやる習慣』(すばる舎)など多数。労働衛生コンサルタント、作家、日本マインドフルネス普及協会代表理事としても活躍している。

 もともと冬は、寒さストレスが強く体も疲れやすくなるため、気分がうつうつしやすい季節です。また秋から冬にかけて発生するうつ病として冬季うつ病が有名ですが、これは季節性情動障害と呼ばれるうつ病の一種です。症状は、典型的なうつ病と似ており、気分が落ち込んだり、物事を楽しめなくなったり、人と会いたくなくなったり。

 異なる点では、炭水化物や甘いものを過食したり、いくら寝ても眠く過眠傾向になったり、などがあります。冬場の日照時間の減少が関係しているといわれ、治療は抗うつ剤などの薬物治療、5000~1万ルクス程度の光を30分~1時間程度照射する光照射療法などが行われます。

 ただし、実はこういった典型的な冬季うつ病(季節性情動障害)になる人はそう多くなく、日本では1%ほどという調査報告があります。産業医・精神科医として感じるのは、正月明けなどにビジネスパーソンが心身の調子を崩すのは、もっと別の理由からのように思います。

 誰でもそうでしょうが、休み明けは日常の生活に戻ることを憂うつに感じるのではないでしょうか。「ブルーマンデー」という言葉があるように、普段から月曜日はほかの曜日よりも会社に行くのを嫌に感じますよね。これが長期休みであればなおさら。朝から夜まで働く忙しい毎日がまた始まると思うと、気分が優れなくなるのは珍しくないと思います。

 ただ、気を付けてほしいのは、そのうち普段通りの自分に戻るケースと、何らかの対処が必要なケースとがあることです。