新日本酒紀行「浦霞禅」千年の歴史を誇る鹽竈神社 Photo by Yohko Yamamoto

クラシックでエレガント!1973年から愛されるロングセラー

 創業1724年の佐浦は、1800年代より陸奥国一之宮鹽竈神社の御神酒酒屋も務め、佐浦弘一さんで13代目という老舗蔵だ。代表銘柄は1973年から支持される「純米吟醸 浦霞禅」。発売当時、酒は級別制度の時代で吟醸酒は品評会のみに造られ、市場流通はほとんどなかった。開発した12代目の父茂雄さんは、松島瑞巌寺出身の僧侶から、フランスで禅の関心が高まっていると聞き、禅僧の書と禅画で日本酒を世界へと発想。酒は贅沢な吟醸を選ぶ。斬新なラベルに気品ある香りと美しい味は、全国に「浦霞」の名を轟かせた。酒質設計は「現代の名工」に選ばれた名杜氏、平野重一さん。吟醸の名手と謳われた平野佐五郎さんの甥で、1960年に佐五郎さんから杜氏を継ぎ、吟醸蔵へと邁進。1965年ごろ、蔵の吟醸もろみから酵母が分離され、1985年「きょうかい12号酵母」の名で頒布が始まる。今、杜氏は重一さんの薫陶を受けた小野寺邦夫さんが、本社蔵総括杜氏として伝統を引き継ぎ、後進の指導に当たる。通常の酵母は自社で培養するが、吟醸造りの歴史に名を残す「きょうかい12号酵母」の新たな展開をと、「純米吟醸 浦霞No.12」を商品化した。