「自力整体」人気の3つの理由

――ところで、「自力整体」は矢上さんのお父様の代から30年以上にわたり、多くの方に愛され続けていますが、その人気の秘訣はどこにありますか?

矢上:ありがとうございます。多くの方が実践してくださる理由は3つあると思います。

 1つ目は、簡単であること
「自力整体」は、痛みや不快な症状を緩和するのが目的ですから、どなたでもおこなえる内容でなければいけません。ですから、簡単であることが特徴です。体が極端に硬かったり、痛みがあったり、正座が難しいレベルの方でも、体を痛めないよう工夫しながらおこないます。

 2つ目は、気持ちがいいこと
たとえば、私の著書『すごい自力整体』の中で紹介している「20分間ショートレッスン」は、体をゆるめ、ほぐし、脱力できるので、やっている間はずっと気持ちよさが続いています。もちろん終了後もリラックスできて、夜おこなえば熟睡できます。

 3つ目は、終わってすぐに効果がわかること
「あ、腰が軽くなった」「ヒザが痛かったのに、痛みがとれている」という感じで、効果が表れやすいんです。もちろん継続しておこなえば、根本的な解決にもつながります。

――矢上さんの生徒さんが「自力整体」を学ばれるきっかけはなんでしょうか?

矢上:ほとんどの方は、「健康のため」というよりも、痛みに悩んでいたり、冷え・むくみ・不眠、女性特有の不快症状を感じられたときにいらっしゃると思います。他にも、「いろいろ試したけれど、よくならなかった、そんなとき、本屋さんでたまたま、自力整体の本を見た」という方が多いですね。

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――痛みをぶり返すたびに、痛み止めなどの薬に頼るより、根本的に解決したいと思いますよね。

矢上:そうなんです。「自力整体」は、先ほどのヒザ痛を解消するワークのように、対処法としてもおすすめですが、痛みや不調の原因を根本から解決する方向にもっていけるので、よいのかなと思います。ちょっとおこなうだけで痛みは緩和されラクになるので、痛みが出たときの「お守り」としても、ぜひ生活に取り入れていただきたいなと思います。でも、そこまで深刻な症状ではなくても、健康維持やダイエットにもおすすめですよ。

――「自力整体」をおこなう前と後で、印象的に変わられた生徒さんはいらっしゃいますか?

矢上:とくに印象に残っているのは、Iさん(男性・58歳)です。『すごい自力整体』を執筆するにあたり、3ヵ月間「自力整体」を実践していただけるモニターさんを募集したところ、応募してくださった方です。学生時代ラグビーの選手だったIさんは、横からのタックルで背骨にズレが生じていました。若い頃は筋肉が支えとなって、なんとかまっすぐな背骨を保っていたのですが、加齢で筋力が低下するとともに、背骨が湾曲していき、杖なしでは歩けない体になっていたんです。

――本に掲載されていたIさんの体験ビフォー・アフターのお姿は印象的でした。

矢上:3ヵ月後のアフターの撮影時、スタジオに杖なしで軽々と歩いて入っていらして。ほんとうに感動しました。「え、別人かな?」と。Iさんは、それまでいろいろな治療院に通われたそうですが、いっこうに良くならず途方にくれていたところ、「自力整体」モニター企画に応募してくださったんです。3ヵ月後の結果は、背骨の湾曲は改善、杖なしでも歩行できるようになり、少しだけジャンプもできるくらい回復されて。

――同時に11キロのダイエットにも成功されましたが、3ヵ月間の指導内容を教えてくださいますか。

矢上:おもに、夜寝る前、寝そべりながら実践できる、「20分間ショートレッスン」(『すごい自力整体』掲載)をムリのない範囲で毎日おこなっていただきました。これは、骨盤を中心にほぐしながら、背骨をはじめ全身のゆがみを整えるワークなんです。それと同時に、「整食法」という食事法も実践していただきました。

――「整食法」について、教えてくださいますか。

矢上:「自力整体」は、体を整えるだけではなく、食べ方も整えていくんです。Iさんは肥満体型でしたので、背骨の湾曲にさらなる体重の負荷がかかっていました。体重を落とすことが最優先事項だったんです。「整食法」の内容は、夜の食事は寝る3時間前に終わらせて、朝は固形物を控え、水分かスープ、またはお粥などを食べて内臓を休めるというものです。これを3ヵ月間やれる範囲でムリなく続け、健康的に11キロの減量に成功したというわけです。

――本には、「内臓疲労」も痛みやコリの原因をつくる、と書かれていましたね。

矢上:そうなんです。内臓が弱ると、腰や股関節、ひざなど、さまざまな部位に痛みがおこりやすいんです。「自力整体」は東洋医学をベースとしているんですが、人の体には「経絡」という道筋がめぐっていて、胃腸に負担がかかると胃腸と同じ経絡上にある部位も同時に痛くなるしくみなんです。たとえば、胃が弱っていると、股関節やヒザに痛みが出やすい。ですから内臓に負担をかけない「整食法」は、痛みの改善に役立つんですよ。

――ところで、ここ数年はビジネスマンの生徒さんも多いそうですね。

矢上:そうなんです。コロナ禍もあって、心身の緊張をほぐすために、オンラインクラスを受けるビジネスマンの方が増えました。とくに印象に残るのは、会社経営者の男性(38歳)です。忙しいスケジュールの中でも「自力整体」を継続してくださり、体調や体型を改善されました。とくに、体が硬く開脚前屈ができなかったのですが、3ヵ月後、ペタ~ッと床につくほど柔軟になられて。さらに体のめぐりも良くなって、5.8キロの減量に成功したんです。

――「自力整体」はパフォーマンスの安定にも役立ちますね。

矢上:骨格のゆがみやズレがとれると、疲れもとれますし、夜おこなえばよく熟睡できるので、心身ともにベストコンディションをキープできるんです。以前、ニューヨークのマンハッタンで「自力整体」のワークショップを開催したとき、7年間不眠に悩まされていたビジネスマンの方から後日「実技をおこなった夜、数年ぶりに熟睡できました!」と連絡をいただき驚きました。

――本の中で紹介されている実践者の体験談も、「体がゆるんで熟睡できる」という声が多かったですね。

矢上:そうですね。ジムやランニングなどで汗をかくのもいいけれど、「自力整体」で自分の体に向き合い、ゆがみに気づいて直すことで、「根本から疲れが癒される感覚」に気づいていただけると思います。

――クラスには、ご高齢の生徒さんも多いそうですね。

矢上:そうなんです、しかも長年やってらっしゃる方が多くて。みなさん本当にお元気です。そうそう、最高齢では、94歳の女性の生徒さんがいらっしゃいましたよ。

――94歳!? すごい!

矢上:74歳から20年間「自力整体」のクラスに通いながら、お一人で山に登ったり、海外旅行したり。お亡くなりになる一年前まで「自力整体」をやりながらアクティブに活動されていたんです。他にも80代で「自力整体」の指導者資格をとられた方もいて、今も元気に活躍されています。

――すばらしいですね!

矢上:年齢とともに、どなたでも筋肉や関節は硬くなっていくものですが、「自力整体」を習慣にすることで、「あったかくて、柔らかい体」をキープして、健康寿命を延ばされているのかなと、しみじみ思います。

【次回に続く】

『すごい自力整体』では、この他にも、整体プロの技法を使って、コリや痛み、ゆがみを解消するワークを多数掲載しています。(★一部動画でもご視聴いただけます)