金融の国際規制基準は、世界中の金融機関に多大な影響を及ぼす。その制定にはどのような歴史があり、何のために制定され、なぜここまでの影響力を持っているのか。今回はこうした基本的な、しかし実はあまり理解されていない国際規制基準の本質について説明したい。
金融規制に関する国際基準の歴史
世界の主要国を網羅する金融の国際規制基準の歴史は比較的浅い。バーゼル銀行監督委員会(BCBS)が創設されたのは1974年。その翌年にBCBSが公表した「バーゼル・コンコルダット」と呼ばれる原則が、金融分野における最初の国際規制基準といわれている。これは銀行の海外拠点活動を適切に監督するための「監督当局間の協力事項」を定めたものだ。その後、BCBSが88年に公表した「バーゼル規制」と呼ばれる国際自己資本規制が、銀行分野における中心的な国際規制基準と位置付けられている。
保険分野においては、保険監督者国際機構(IAIS)が97年から国際規制基準を作り始め、2000年に「保険監督原則」を公表した。これは保険監督の原則を網羅した国際規制基準として、今も中心的な役割を果たしている。
また、前回までに書いてきたとおり、国際金融危機を契機に09年に設立された金融安定理事会(FSB)は、G-SIFIsに対する規制基準の枠組みをBCBS、証券監督者国際機構(IOSCO)、IAIS等と協力し策定してきた。