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夢遊病の男性が眠ったまま殺人を犯し、裁判で「犯行時に意識がなかった」と無罪判決を受けた。実に、われわれの常識を揺さぶる事件だ。人間の行動を決めているものの正体とは何か?※本稿は、筑波大学教授の櫻井 武『意識の正体』(幻冬舎)の一部を抜粋・編集したものです。
行動を起こすために必ずしも
本人の意識は必要ではない
私たちは、「意識こそが行動を生み出している」と思っている。世界を見て、考えて、判断して、動く。そのすべてを、自分の“意識”が司っていると。だからこそ自由意志をもって自分の行動を支配下においておけるのだと。
しかし、それは本当だろうか?
現代神経科学は、私たちの行動の大部分が、実は「意識なしに」生じうることを示しているのだ。意識は、行動の後に“意味づけ”をするだけの語り部にすぎないのではないか?
私たちは「行動するには意識が必要だ」と当たり前のように思っている。だが、その信念を根底から揺るがす現象がある。夢遊病、すなわち睡眠時遊行症である。
睡眠中に調理をしたり、自動車を運転したり、さらには眠っている間に絵を描く、あるいはピアノを弾く、という信じがたい行為までが、実際に記録されているのである――。
睡眠時遊行症は、俗称で「夢遊病」といわれるが、実は夢を見ている状態での反応ではない。むしろ、夢は見ていない深いノンレム睡眠中に起こる。患者の多くは子どもで、7歳までに4人に1人が経験する。大脳皮質は沈静化しており、意識はなく、覚醒反応もない。にもかかわらず、患者は突然ベッドを抜け出し、歩き、障害物をよけ、場合によっては階段を下りる。







