保険の国際機関IAISが、保険業界から「財政的独立」を達成した舞台裏Photo:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

 国際協力とは、多様性から調和を生み出す過程である。「多様性から生まれる調和」(unity in diversity)とは、音楽に例えれば、オーケストラでそれぞれ特徴のある異なる音色の楽器が、一緒に演奏することにより美しいメロディーを醸し出すのと似ている。さまざまな人々が集まり、その多様性から美しい調和を生み出すことができる。

ファーストネームで呼び合う国際会議

 国際会議は多様性の宝庫である。人種、国籍、性別、年齢等を超えて、皆で新しい世界を築くために議論をする。例えば規制の国際基準案を議論すると、必ずいくつかの国からは反対が出る。予想もしなかった考えに驚かされることも少なくない。まったく異なった議論を延々と展開する人が現れる。それがその人の信条を体現した意見であったりすると迫力がある。まるでオペラの歌い手を見ているようだ。しかし、国際基準はコンセンサスで決めるのが基本であるため、それらの人たちが反対を唱え続けている限り合意が成立しない。さてどうしたらよいものか。

 まずどんな相手でも敬意を持って接し、つながることから始まる。そのために、つながりができる場や時間をつくる。そして皆が自分の意見を自由に発言できる環境を整えることだ。声が大きい(自己主張の強い)人だけではなく、できるだけ多くの人が自由に発言できるよう会議の運営に十分配慮する。そして無心に集中して聞く。その人の意見のみならず、心や感情を聞く。そうしてその人全体を理解した後、よく考え、一緒に解を目指して議論を続ける。

 この際、肝に銘じるべきなのが「真実は一つではない」ということだ。自分が支持する考えだけが真実ではない。あくまでもそれは「一つの見解」に過ぎない。他の人々の考えを無心で聞くことによって異なった見方も理解できる。新たな発想が生まれてくる。このような過程を経て共通点を見いだし、世界中に影響力のあるような国際基準が生まれてくる。