メーンタイトル:銀行の自己資本比率規制「バーゼル3」、自己資本比率規制以外&信用リスク見直し【確定版】Photo:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

 連載の最終回は、自己資本比率規制以外に、国際統一基準行にのみ課される規制と、G-SIB等にのみ課されるTLAC規制について解説する。

 また、本連載の第3回から第5回では、2021年9月公表の規則案に基づいて信用リスクの見直しについて解説したが、22年4月に規則の確定版が公表されたため、案からの主な変更点について解説する。

流動性カバレッジ比率規制

 流動性カバレッジ比率規制とは、金融市場が混乱している状況において、銀行が流動性不足により破綻することを防ぐため、そのような状況でも現金化可能な流動資産を、短期間(30日間)の資金流出額以上保有することを求める規制である。同規制では、「適格流動資産」の額を「純資金流出額」で割った流動性カバレッジ比率(LCR)が100%以上であることが求められる。

 分子の適格流動資産の額は、銀行が保有する資産のうち、現金・国債や一定の格付け以上の社債などの額に所定の掛け目をかけて算出され、掛け目は流動性の高い資産ほど大きい。

 分母の純資金流出額は、LCRの算出基準日(各四半期末)からの30日間で流出すると想定される資金流出額から、同期間内に流入する資金流入額を差し引いた額である。資金流出額は、預金者が銀行に預け入れている預金などの資金流出項目ごとに資金流出率をかけて算出する。

 LCRが100%を下回った場合や近い将来に下回る恐れがある場合は、当局への報告が求められ、必要に応じて業務改善命令が発出される。