業績好調な非上場企業の経営者であれば、多くが節税のために活用してきたであろう法人契約の生命保険。だが、2019年に税務取り扱いの大幅な変更があり、当時、駆け込み加入した保険の解約返戻金が2025年にピークを迎える。節税保険の加入を単なる「課税の繰り延べ」にしないための、出口戦略として有効な4つの手法について解説する。(アレース・ファミリーオフィス代表取締役 江幡吉昭)
2025年にピークを迎える
節税保険の解約払戻金
もうかっている非上場企業の経営者では大抵の方がお世話になってきた法人契約の生命保険。この所謂「節税保険」について2019年2月に大幅な税務取り扱いの変更があり、実質的に節税効果が期待できなくなりました。2019年2月14日に「節税保険の税務通達を見直す」という事前アナウンスがあり(バレンタインデーショックと呼ばれました)、その後、2019年6月末に新たな通達が出されました。
実はこの時、「新たな税務通達が出されるまでに節税保険に入っておけば、保険料を全損で経理処理ができるので、今のうちに新規に契約しておこう」ということで、2019年2月から6月にかけて節税保険の駆け込み加入がものすごい勢いでありました。
そして4年が経過し、2019年に駆け込み加入した節税保険の解約返戻金が2025年にピークに迎えるのです。その金額は一説には合計3.9兆円といわれているようです。保険業界全体の個人保険の新規年間保険料が大体1.3兆円ですので、その3倍である3.9兆円はかなり大きな金額といえるのではないでしょうか。
一般的にはこの手の法人保険はどの会社も加入者の年齢によって差はありますが、大体2025年をピークに解約返戻金が減っていくので、その前後に解約する必要があるのです。よって、節税保険の出口戦略は、経営者にとっての2025年問題だと考えています。
通常、こういった保険に加入する非上場企業は継続的にもうかっています。利益が出ている最中に2025年を迎え、「節税保険を解約したら多額の法人税がかかってしまって結局、課税の繰り延べにしかならない…」「何かいい出口戦略はないか」というのがよくある社長のセリフです。
継続的に利益を出し続けている会社でも「課税の繰り延べにならず、結果的に節税となる方法」はあります。その代表的なものが、保険の解約返戻金を社長の退職金と相殺することです。
仮に保険の解約返戻金が1億円として、会社が社長に退職金1億円を払えば、1億円の益金(解約返戻金)と1億円の損金(退職金)が相殺されることになり、保険を解約しても法人は税金を払わずに済み、社長個人は退職金を受け取れ、結果的に節税になります。
しかし、節税のためとはいえ、社長が退職を決断するのはなかなか難しいでしょう。そういった場合でも節税保険の出口として使える手法があるのでいくつか取り上げたいと思います。