さまざまな感動と興奮の余韻を残して、中東カタールで開催されたサッカーのW杯が幕を閉じた。アメリカ、カナダ、メキシコで共同開催される3年半後の次回大会を待ち遠しく感じる一方で、実はW杯の魅力をスポイルしかねない問題が生じている。出場チーム数を現行の「32」から「48」へ、一気に50%も増やした背景に見え隠れする国際サッカー連盟(FIFA)の拝金主義と、このタイミングで次回大会の開催方式を変えようとしているご都合主義を追った。(ノンフィクションライター 藤江直人)
カタール大会中に飛び出した
FIFA会長の2026年大会の「再検討」
W杯の歴史に残る死闘と、5度目の挑戦で悲願の世界一を勝ち取ったアルゼンチンのリオネル・メッシの笑顔。そして、究極のグッドルーザーだったフランス。サッカーの魅力がすべて凝縮された至高の決勝戦をもって、世界中を魅了したカタール大会が12月18日に閉幕した。
日本を含めたサッカーファンの熱い視線は早くも、3年半後の2026年6月から7月にかけてアメリカ、カナダ、メキシコの3カ国で共同開催される次回W杯へ向けられている。しかし、カタールから世界へ発信された盛り上がりに、水を差すような問題が発生している。
しかも震源地はサッカー界の最上部団体、国際サッカー連盟(FIFA)のトップだった。弁護士資格を持つスイス出身のジャンニ・インファンティーノ会長は、決勝戦を2日に控えた16日の記者会見における質疑応答で、おもむろに次回W杯に関して言及した。
「グループステージの実施方式を、再検討しなければいけない」
この発言がなぜサッカー界で問題視されているのか。根本的な理由はカタール大会までの「32」から「48」と、一気に50%も増えた次回大会の出場チーム数にある。