サッカー日本代表はなぜ盛り上がらなくなったのかPhoto:Koji Watanabe/gettyimages

4年に一度のサッカー界最大の祭典、W杯の開幕が直前に迫りながらほとんど盛り上がりを見せない状況で、Jリーガーで構成される国内組の代表選手が11月9日に開催国の中東カタールへ飛び立った。週明けからはヨーロッパ組が順次合流し、23日のドイツ代表とのグループリーグ初戦へ向けて本格的に始動する。過去の大会のような熱狂ぶりが見られない要因と、実は高く跳び上がるための陣容は整いつつあり、必要なのはきっかけだけという舞台裏を探った。(ノンフィクションライター 藤江直人)

サッカー日本代表
今の集客力は

 キャプテンのDF吉田麻也が「難しいですね」と思わず答えに窮し、ようやく絞り出したちょっと笑えないエピソードが、日本サッカー界が置かれた現状をそのまま表していた。

 サッカー王国・ブラジル代表を国立競技場に迎えた、6月6日の国際親善試合を翌日に控えた代表選手のオンライン取材対応。質疑応答の最後に「W杯開幕まで半年を切ったなかで、日本国内での盛り上がりをどのように感じているのでしょうか」と問われたときだった。

「ブラジルとの対戦が決まって、たくさんの人からチケットを頼まれてすごく難しかったんですね。だから、盛り上がっているのかなと個人的には思っていたんですけど。この間の札幌の試合を見て、チケットが売れ残っていると知って、ちょっと自分の肌感覚とは違っていました」

 吉田が言及した「札幌の試合」とは、6月2日に札幌ドームで行われたパラグアイ代表戦を指している。7大会連続7度目のW杯出場を決めた森保ジャパンが、モードをアジア最終予選からカタール大会へと切り替えて、強化を目指していく国内4連戦の初戦だった。

 札幌ドームでの日本代表戦開催は約8年ぶり。しかも、コロナ禍の日本で設けられてきた観客数の入場制限も撤廃されていた。しかし、約4万2000人のキャパシティーに対してパラグアイ戦の観客数は2万4511人。6割に到達しなかったスタンドはどうしても空席が目立った。

 対照的に8年前の2014年9月5日に開催された、日本対ウルグアイの観客数は3万9294人とほぼ満員だった。ブラジルW杯後に就任したメキシコ出身のハビエル・アギーレ監督が初めて指揮を執る一戦であり、日本のキャプテンを務めていたのはFW本田圭佑だった。